ファンデーションを通して感じるアメリカのマーケットが持つ複雑さ

ずっと書きたいと思いながらうまくまとめられなくて先延ばしになっていたトピック。

 


 

2017年の後半に発売されたあるファンデーションが、アメリカのビューティ界にセンセーションを起こし、その他のブランドの既存ファンデーションや新しいファンデーションに大きな影響を及ぼしている。これはおそらく日本ではあまり大きく取り上げられないエリアの話なのかもしれないけれど、アメリカでは大きな焦点となっている。

 

そのきっかけとなったファンデーションとは、アメリカの人気スター Rihanna が立ち上げた Fenty Beauty の Pro Filt’r Foundation だ。Fenty Beauty 自体、Rihanna によるエッジ―なコンセプトとビジュアルで話題性は非常に高かったが、特に多くの注目を集めたのがファンデーションの色展開。新しいブランドにも拘わらず、Fenty はスタートから40色のファンデーションを発表したのだ

 

 

40色以上を展開するファンデーションは他のブランドにもあるが、Fenty の Pro Filt’r が特に大きな称賛を受けたのには2つポイントがある。

 

  1. まだブランドとして基盤がないスタート地点から多くの人に受け入れられる姿勢を示したこと
  2. ただ40段階の色を作ったのではなく、幅広い肌のシェードとトーンに対応した展開だったこと

 

これは老舗ブランドまでも脅かすほど影響力があった。2017年の Pro Filt’r 発表以来、様々なブランドがファンデーションの色開発に慎重になってきているNARS は最近既存のファンデーションに新色を足したし、DiorCoverFX が昨年発売した新しいファンデーションも40色展開だった。

 

そんな中で、Fenty から更に新しい動きが。Pro Filt’r シリーズから本日発売されるコンシーラーは、なんと50色展開。そしてそれに合わせてファンデーションも10色足して50色になるとのこと。

Rihanna!更に上をいく動きはもうここまでくると誰にも止められない。でもこれが今まさにアメリカのファンデーション マーケットでは最も重要なキーになっている気がする。ファンデーションそのもののクオリティや仕上がりより、どれだけ多くの肌の色にこたえているかどうか、が一番の話題になる。

 

実際にこれに失敗してしまったブランドもたくさんある。例えば昨年発売された Tarte のファンデーションは、ブランドのボイコットまで引き起こすほど大きな議論となったし、スポンジで有名な Beauty Blender が満を持して発表したファンデーションも叩かれていた。どちらも商品詳細が明らかになると、色展開の乏しさばかりがやり玉にあげられたのだ。「Tarte も Beauty Blender もすでに確立したブランドで資金もあり、もっと多くの人にこたえる色展開ができるはず。」という意見に対し、ブランドは「発売はこの展開でいくけれど、今後増やしていく」と発表したことにより更に炎上し、「では今回発売されなかった色の私たちは重要ではないということ!?」と、消費者をがっかりさせた。 *その後、両ファンデーションは実際に色展開を拡大した。

 

メイクアップ ブラシで知られている Morphe も先日ファンデーション マーケットへの参入を発表した。しかも色展開は60色!圧巻の色数だが、実際に消費者は満足していない模様ですでに炎上している。「60という数で注目を集めようとしているけれど、実際にはただ明るい色と濃い色の範囲を伸ばしただけで異なるアンダートーンをしっかりカバーしていない」とか、「かねてから白人のインフルエンサーとのコラボレーションばかりしてきたのに、今になって急に多くの肌の色に向けたマーケティングをするのはしらじらしい」といったバッシングを受けている。

 

Tarte や Beauty Blender が発売時の色展開の不十分さに受けた批判と、Morphe のただ色をたくさん出したけれど考慮が足りない展開の問題。これらは異なる次元に原因があり、どちらもブランドにとっては簡単ではないこと。繰り返しになるけれど、Fenty は前述の2つのポイントどちらにおいても成功した稀な例であることが改めて感じられる。

 

この勢いは高まる一方で、きっとブランド側のプレッシャーはハンパないだろうなぁ。正直、日本にいたら気づかなかった。

 

2017 THE LITTLE WHIM でも触れたが、アメリカは人種が多様で肌の色も様々、ゆえに、ファンデーションの色展開も幅広い。日本に比べると選択肢は圧倒的に多く、事実、特に大手ブランドのベスト セラー ファンデーションは色展開をしっかり拡大している。日本でも購入可能な有名ファンデーションを例に日本とアメリカの色展開を比較してみる。

 

ブランド ファンデーション 日本 アメリカ
Make Up For Ever ウルトラ HD ファンデーション 21 40
MAC スタジオ フィックス フルイッド 9 60
Lancome タンイドル ウルトラ ウェア リキッド 12 45
Estee Lauder ダブル ウェア ステイ イン プレイス メイクアップ 10 56

(順不同、2019年1月現在)

 

Make Up For Ever や MAC のようなプロフェッショナルが使うブランドをみると特に、日本での限られた色展開が目立つ。更には、ただ数を見るだけでなく実際の展開の仕方を見てみると更に大きな違いがある。日本はほとんどがフェア ~ ライトに属するいわゆるベージュっぽい色に集中しているのに対して、アメリカは白に近い明るい色から始まり、ミディアムやダークにも重きをおいて異なるトーンを展開している。

 

上記のファンデーションの中で日米の色展開の差が最も小さい MUFE の ウルトラ HDで比較しても、これだけ違う。

 

これはもちろん、日本というマーケットは多様性が限られているのが大きな理由であり、そこを論じたいわけではない。ただ、ここから特に際立って見えるのが、アメリカのマーケットの難しさだ。アメリカには異なる人種がたくさんいて、大きな国土を抱えるため地域による違いが多く、ニーズが多様。主張が強くハッシュタグが溢れるソーシャルメディアを持つ。ゆえに、求められる要素は拡大する一方。たかがファンデーション、されどファンデーション。間違った選択や決断で、ブランド自体の価値を損ねてしまう可能性がある。

 

余談だが、これは私が身を置くファッション業界でも同様で、サイズ展開はよく話題になる。ブランドが自らの顧客を限定せず、多くのボディに対応することが要求されている。確実に売れる部分にのみ集中したいのがブランド側の本音だが、それでは消費者は満足しないし離れていってしまう。展開を増やすのは、開発/製造/在庫管理といった様々なレベルでコストがかかるが、それを管理して多くのニーズにこたえることが要求されているのが今のマーケットなのだ

 

アメリカにおける多様性と向き合う課題はしばらく続きそうだし、今後どう進化していくのかも気になるところだ。いずれ3ケタの色展開なんてファンデーションも出るのかな!?アメリカのビジネスにおいて、利益を追求することと求められている責任を果たすことの両立が多様性によって更に複雑になっているのを、ファンデーションを通してひしひしと感じる。

 

 

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