動かない VLOG – アップステートニューヨーク | ディア・ビーコン | ヴィーガンランチ

Vlog とは、「動画(video)のブログ (blog)」のことなので、「動かない vlog」として静止で何かを伝えようとするのはとんちんかん。でもあえてそう言いたくなるほど、映像でさまざまな場所を観たり情報を得られる今、 THE LITTLE WHIM に来てくださる方々には感謝でいっぱいです。

アメリカでパンデミックが広がる前にテキサス州のオースティンに飛行機で旅した以外、世界中の多くの人々がそうなように、今年は遠出をしていない。秋には、(アメリカ北東部でニューヨークから列車か車で行ける距離の)ロードアイランド州に旅行ができますように、と数ヶ月前に夫と話していた。そして秋はやってきたのに、その計画も結局、どうも気が乗らない状況が続いてしまっている。

9月に、お誕生日を迎えた。1年ごとに必ずやってくるお誕生日だけれど、今回の12ヶ月の感覚は、これまた世界中の多くの人々にとってそうなように、おかしかった。まるで何もしていない、どこにも行かず過ごす時間が長過ぎる。何かしよう!どこかへ行こう!お誕生日だ!と夫と話し、ニューヨーク州北部(アップステート)にあるビーコンに、日帰りで出かけることにした。

ビーコンに訪れるのはおそらく5回目。といっても最後に行ったのは4年前。パリ在住のアーティストの友人が1年だけ美術プログラムでニューヨークに滞在していて、その時に彼女と夫と3人で行った2016年の夏以来。

今日は、1年ぶりにやってきたお誕生日に、4年ぶりのビーコンに訪れ、7ヶ月ぶりに楽しんだ美術館を、動かない vlog としてお届けします。

ビーコンまでは、マンハッタンのグランドセントラル駅からメトロノースの列車に乗って、北へ北へ向かって1時間半ほど。電車のチケットはアプリで予約してあったけれど、グランドセントラルに着いてびっくり、券売の窓口は開いていなかった(2020年9月の情報)。事前予約か自動券売機のみなことに気付き、ずらーっと並ぶ閉鎖された券売窓口、そしてふと周りも見てみたら、朝早かったとはいえ、知っているグランドセントラルに比べたら静かでがらんとしているのを感じざるを得なかった。

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東側にあるニューヨーク州と西側にあるニュージャージー州に挟まれるハドソン川に沿って進んでいく景色とともに電車の旅を楽しむため、行きは左側、帰りは右側の席に座る。

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ビーコンのすぐ手前にある Pollepel Island を通り過ぎる。2015年の夏の終わり、1920年の火災で廃墟となっている Bannerman’s Castle の外壁をライトアップし、光と光をつないでこの古城の元の姿を再現するアートインスタレーション “Constellation” に行ったことを思い出す。特にこれといった大きな思い出のないまま終わった今年の夏を、懐かしさが埋めてくれる。

ビーコンは小さくてダサかわな町だ。私が住んでいるブルックリンのグリーンポイントとどこか似ている空気を持つ。ヒップスター的匂いが多方面から漂ってきつつも、素朴さもしっかり残っていて、そこがかわいい。

それが心地よくて、はるばる1時間半かけて来たのに、ブルックリンで過ごす週末と同じようなことをしてしまう。

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ヴィンテージレコード古本古い家具や雑貨・・・結局そういうものを見てまわる。メインストリートを歩きながら、記憶をたよりに行きたいお店にたどり着くと、今もそこにそれがあることに喜びと安堵を感じながら。

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ヴィーガンになってからビーコンを訪れるのは初めて。若い層も多く、郊外とはいえ新鋭的な部分も持つビーコンだけれど、プラントベース事情には不安もあったので、事前にランチをする場所は調べてあった。

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パレスチナ料理(珍しい!)を基調とした地中海・中東系料理のローカルなお店、Ziatun。ヴィーガン/ベジタリアンフレンドリーなメニューが揃っている。グルテンフリーの表記もあり。

ビーコンもどうやら、ニューヨークの都市部と同様、飲食店の店内営業はしていない様子(2020年9月の情報)。外席で、テーブルの上のQRコードからメニューにアクセスして、注文。そこもシティと同じ。

早起きで朝食抜き、お昼前には腹ぺこ。私は欲張りメニューであるいろいろ盛り合わせ、Futur Sampler をオーダー。フムス、ババガヌーシュ、ファラフェル、豆料理、野菜の小皿が数種、ピタ、そして中東のスパイスのザアタル(あ、お誕生日なのでフレンチフライも)。

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ファラフェルのサンドイッチを頼んだ夫と、テーブルからはみ出しそうなほどたくさんの小皿から、あれもこれもと忙しくつまみながらランチを楽しむ。

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その後は、お腹いっぱいで重くなった体を動かすべく緑あふれる道を散策する。

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時計を少し気にしながら足を向けるのは、ビーコンの町を象徴する存在である Dia: Beacon(ディア・ビーコン)。こちらも事前予約してあり、時間制で入場する(2020年9月の情報)。

Dia: Beacon は、かつてナビスコの包装工場だった施設を利用した美術館。

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巨大なスペースにさまざまな近代アート作品が並ぶ。ニューヨークの美術施設は再開したばかりで、入場制限があるとはいえ不安も感じる中、広々としているここは、久しぶりの美術館として選ぶのにはちょうどよかった。

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Barry Le Va

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Sam Gilliam

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Lee Ufan

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Richard Serra

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Dan Flavin

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Michelle Stuart

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Michael Heizer

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Andy Warhol

私の記憶では、以前は各部屋ごとに訪問者が手にとって読めて、終わったら返却する作品の解説カードがあったのだけれど、スマホでQRコードで読み取ってオンラインで情報を得るシステムに変わっている。感染症対策なのか、もしくはそれ以前からそうなっていたのかもしれない。

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Anne Truitt

ニューヨークシティには有名な巨大美術館がいくつもあるけれど、広さはあっても閉鎖的でぎゅうぎゅうに詰め込まれているところが多い。私は Dia:Beacon の、どこまでも続く空間にゆったり展示してあるところと、大きな窓から入り込む光が好き。

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久しぶりの美術館を堪能し、ほどよく感じる疲れ。併設のカフェでひと休憩する。夫がビールを見ていたので、私もお誕生日だし特別に、普段は飲まない炭酸飲料を。イタリアのオーガニック・ピンクグレープフルーツ。

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美術館をあとにし、1時間に1本程度の上り列車を待ちつつ、陽が傾き始めたハドソン川沿いでゆったり散歩をする。

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1年ぶりにやってきたお誕生日に、4年ぶりのビーコンに訪れ、7ヶ月ぶりに楽しんだ美術館。帰りの列車の中で夫と話しながらあらためて感じたのは、こうやってどこかに出かけて、違う場所で時間を過ごし、何かを感じるのは、やっぱりすごく楽しい!ということ。

月並みだけれど、今年に入ってからの数々のできごとは、そういった経験をすることを難しくしたと同時に、ありがたさを再認識させた。制限されたことで気づく、自分が持つ自由。それがいかに尊いことか。

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訪れてみたいところ・再訪したいところのリストは、近頃どんどん長くなるばかり。だからこそ、もし行ける時のわくわくした気持ちやきらきらした光景は、なおさらとっておきのものになる。

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