ジェンダーとファッション

 

4月に、ボストン美術館(Boston Museum of Fine Arts)で興味深いファッション展示を見た。

 

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テーマは「ジェンダー・ベンディング・ファッション。あまり日本では馴染みがない言葉かもしれない。以下は展示の導入で定義されていた「ジェンダー vs 性別」と「ジェンダー・ベンディングとは?」。

 

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ジェンダー vs 性別

「ジェンダー」と「性別」は日常の会話の中でしばし置き換えて使われることがあるが、ここ数十年の間にこの2つの言葉ははっきりとした見解を得るようになった。性別は生物学的根拠で証明される人体的な特徴である。生物学的根拠は一人の人間のジェンダーを定義する上でのいくつもの要素の内の一つに過ぎない。

 

ジェンダー・ベンディングとは?

特に服装や振る舞いにおいて、伝統的なジェンダーの見解に逆らう、もしくは挑戦すること

 

※ THE LITTLE WHIM 訳

 

つまりこのボストン美術館の展示は、生物学的見解の性別に捉われないだけでなく、伝統的なジェンダーの解釈を飛び越えたファッションに着目している

 

英語でのジェンダーに関連する定義は、こんなにあるんだって!

 

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知っているものもあれば、初めて覚えるものもあった。これらは展示されているファッションを説明する上で注意深く使い分けられていた。

 

 

展示はまずこの2つのピースから始まる。

 

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左は Alessandro Trincone の “Annodami” Collection (Spring/Summer 2017) 。Young Thug が “Jeffery” のアルバムカバーで着用した、男性的姿態の中に存在するフェミニズムを表現しているドレス。右はViktor & Rolf の “One Woman Show” (Fall/Winter 2003) 。このスーツが発表されたオートクチュールのショウは中性的なイメージを象徴する女優の Tilda Swinton がインスピレーションとなっており、彼女がオープニングを飾りランウェイを歩いていた様子がビデオで鑑賞できた。

 

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その後は、20世紀の歴史の中に見られる早期のジェンダー・ベンディングを象徴するアイテムが続く。

 

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トランスジェンダーやクィアなど、性別の垣根を超えたジェンダーのコンセプトはファッションとしてランウェイでもストリートレベルでも、現在新しい解釈が次々に生まれ注目されている。しかしこの展示では、ジェンダー・ベンディングのコンセプトはアメリカやヨーロッパのファッションにおいて実は新しいものではなくずっと存在してきていることにも着目していることがうかがえる。

 

更には、1980年代からずっとパリ、そして世界を舞台に活躍している日本デザイナー達の作品も。

 

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左は Yohji Yamamoto の Spring/Summer 2007 Collection、右は Rei Kawakubo for Comme des Garçons の Spring/Summer 1994 Collection。どちらも、上はドレスシャツ、タイ、タキシードやブレーザージャケットといったマスキュリンな要素を含めつつ、下はプリーツスカートやラップスカートのようなフェミニニティがある。この対比はどちらのルックにおいて独特の調和があり、つまりは男性的でも女性的でも中性的でもない、着る人のパーソナリティによって定るスタイルだと感じた。

 

その他にも、ジェンダー・ベンディング・ファッションが見られるレファレンスが多く展示されていた。

 

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1970年代から80年代にかけて、ロックンロールやポップミュージックがビジュアルを通して伝えたジェンダー・ベンディングのコンセプトは特に興味深い。デビット・ボウイ、パティ・スミス、グレース・ジョーンズ、ボーイ・ジョージ、プリンスなどのアイコンが持つ独自のスタイルは今も多くのファッションに引用されているが、この当時にこれをすることの意味、これが世の中に与えた影響は大きかったことだろう。

 

 


 

私はニューヨークに引っ越してから、東京にいた頃よりジェンダーに対する見方は大きく広がった。ニューヨークは前衛的な街で様々なジェンダーへの向き合い方を歓迎している。更には、私は通った学校も働いたことがある業界もファッションなので、事実様々なジェンダーの考え方を持つ人々と出会ってきたし、それらは人となりだけでなくファッションを通して受け入れられるべきであることも学んだ

今回このジェンダー・ベンディング・ファッションに関する展示を見て、今まで実生活の中で見てきた様々なジェンダーの表現を体系的に観察することでより深く理解することができた。ファッションは表現であり、主張であり、そして最終的にはその人そのものである身を装おうものを通して表現される自由と勇気は今後もっと理解され尊重されるべきであり、そして実はその道にはすでに長い歴史があったことを知り、重みが増した

 

大き過ぎない規模で、このテーマに馴染みがない人にも見やすい展開だったと思う。この展示はボストン美術館で今年の8月25日まで開催されている。

 

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