ファッションはアート

 

今年のMet Galaの展示は特に楽しみ。

 

ここ数年メトロポリタン美術館で行われている、Conde Nastによる、というかVogueによる、というかAnna Wintourによる、アートとしてのファッションの大きなイベント、Met Galaとファッション企画展示。

 

今年のテーマは

“Manus x Machina – Fashion in an Age of Technology”

 

[http://www.metmuseum.org/exhibitions/listings/2016/manus-x-machina]

 

つまりは、人の手 対 テクノロジー といった感じ。(大好きなテーマの一つ)

 

19世紀の貴重なオートクチュールから最新のデザイナーまで、幅広いビジュアルを通して、丁寧に手作業でひと針ひと針縫われたファッションと最新のテクノロジーを用いた産業としてのファッションの違いを浮き彫りにする。

 

Vogueにて公開された展示作品の一部を見ていても、そのテーマの深さを感じられる。

 

こちらのシャネルのアイコニックなスーツ。

 

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Left: Suit, Gabrielle “Coco” Chanel, 1963–68 Haute Couture, Right: Ensemble, Karl Lagerfeld for House of Chanel, Autumn / Winter 2015–2016 Haute Couture (Courtesy of Vogue)

 

どちらもオートクチュール。

しかし左は1960年代のCoco Chanelによるものであるのに対して、右側はKarl Lagerfeldによる昨シーズンのデザインであるの。
Coco Chanelが当時の女性達に提案したスポーティ(スポーティとアスレチックというのはファッションにおいて大きく違う – スポーティとは、動きに対応できるスタイルであるということ、決してスポーツ用ではない)なスーツは革新的だった。それを継承しつつもよりフィットがあり、そして21世紀的な前衛的Lagerfeldのシャネル。

以前Parsonsの授業であったシャネルのケーススタディ。Karl Lagerfeldが任された当初のシャネルは、Coco Chanel没後低迷し、もう後がない破産手前の状況だった。それを考えると、今ではシャネルはLagerfeldと生涯契約をしているほどLagereldなしでは語れないブランドになっているという事実は興味深い。「もしCoco Chanelが生きていたら、今のシャネルをどう思うか」という質問に対して「きっと嫌悪していたはず」とLagereldは答えるそうだ。これはCoco Chanelのエレメントを尊重しつつシャネルをすっかり自分のブランドにした自信の裏返しなのかもしれない。

 

次は、比較してみたくなったこの2スタイル。

 

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Left: “Vilmiron” Dress, Christian Dior, Spring / Summer 1952 Haute Couture, Right: Dress, Christopher Kane, Spring / Summer 2014 (Courtesy of Vogue)

 

女性が主張したいものとは、と考えさせられる。

左の1950年代のDiorは、柔らかい素材と身体の曲線を緩やかに描くドレープ、そして華やかで繊細な刺繍。古典的にフェミニンであり、そして普遍的に美しい。一方右のChristopher Kaneは、スカートのベースは同じようなニュートラルな色の素材だが、コントラストの強い、そして存在感のある装飾が施されている。おまけにトップはスウェットのようなデザイン – これは確実に、着こなせる本人の魅力が何より重要なスタイルである。

普遍的なフェミニニティと、挑戦するフェミニニティ。

 

そして色について。

 

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Left: “Flying Saucer” Dress, Issey Miyake for Miyake Design Studio (Japanese, founded 1970), Spring / Summer 1994, Right: Ensemble, Raf Simons for House of Dior (French, founded 1947), Spring / Summer 2015 Haute Couture (Courtesy of Vogue)

 

目に鮮やかな色の遊びが共通するこの2つのスタイル。

1970年代の終わりから90年代にかけて多くの日本人デザイナーが注目された。Issey Miyakeによるこちらのドレスはオートクチュールでこそないものの、Japanese Avant-Gardeの代表的な作品。独自のプリーツ技術と、「空飛ぶ円盤」と名付けられた通りの独特の構造、そして何より目を惹く鮮やかさ。一方右側のドレスは先日退陣を発表したRaf SimonsによるDiroのオートクチュール。”Dior and I”のドキュメンタリーでも描かれていたように、数少なくなっているフランスのクチュール ハウスの威厳と、メンズやミニマリズムを追求してきたRafのクリエイティビティが弾けそうな色合いとともに詰め込まれている。

どちらもカラフルなスタイルだが、異なるエネルギーを感じる。

 

こちらは素材について。

 

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Left: Evening dress, Yves Saint Laurent, Autumn / Winter 1969–70 Haute Couture, Right: Ensemble, Iris van Herpen, Spring / Summer 2010 Haute Couture (Courtesy of Vogue)

 

素材が主役なスタイルも、人の手によるものかテクノロジーに重きをおくかでこうも異なる。

左はYves Saint Laurentがデザインをしていた頃の、フェザーが豪華に使用されたイブニング ドレス。一度見ただけで記憶に残るこの色合いとシルエットが、まさしくこの素材の魅力を最大限に活かしている証拠。一方右側はIris van Herpenによるもの。こちらは様々なデザインの分野において話題の種となる、3Dプリントによるもの。多くの業界が明るい未来を期待する3Dプリンティングはファッションにおいても重要なテクノロジー。

昨年のメトロポリタン美術館のファッション特別展示は中国を大きく取り上げた内容で、中国の伝統や歴史にインスパイアされた美しいドレスの数々にはまさしくため息が止まらなかった。

 

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昨年足を運んだ、“China: Through the Looking Glass” より

 

私は美術館で見るファッションが大好きだ。商業的な成功より、作品そのものの美しさや影響力を感じとることができる。アートとしてのファッション。そして特に今回のこの展示には私の働くブランドも含まれているというのにも、胸が熱くなる。

ファッションのビジネスは問題も多く、がっかりする場面もあるが、こうやってアートとしてのファッションという形で権威ある美術館で展示されるブランドで働けていることは、少なからず私の気持ちを満たしてくれる。

 

“Manus x Machina”は5月5日から。