「ダサかわ」から「ラクかわ」へ?未来の自分のスタイル

自分の未来を見据える、ファッションの新しい考え方。

 

久しぶりに ManRepeller を開いたら飛び込んできたこのヘッドライン。

 

数年前に話題になった “Normcore” というスタイルを対照にあげて、今気になるのは “Menocore” だという内容。Menocore は ManRepeller が作った言葉で、Menopause(更年期)と Hardcore の造語。ちょっと奇抜だけれど、実に分かりやすい – 中年女性の究極のスタイルということ。

 

Menocore の特徴は、誰にどう見られるかは基準にない、究極に心地がよいスタイル。あれ、それって Normcore とどう違うの?てかそもそも Normcore って何だっけ?と思い自分のかつての記事を読み返してみた。(THE LITTLE WHIM の前身であったブログを書いていた頃、2014年の記事。)

 

[https://thelittlewhim.com/2014/03/12/normcore/]

 

なんとも稚拙な記事で(その割に今も進化は見られていないけれど)恥ずかしいながら、Normcore  の基本を思い出すには十分な情報があった。Normcore は、究極に普通のスタイルを通しても表現される自分の見せ方としてあえて選ばれたダサかわスタイル、といった感じ。シンプルなタートルネックやTシャツにジーンズ、スニーカーやクロックスといったアイテムが象徴的だった。

 

一方で ManRepeller が唱える Menocore は、Normcore のような必須アイテムはなく、要は「自分が好きなおばさんスタイル」といった印象を受けた。分かりやすい例としてオフホワイトのリネン シャツや裾をロールアップしたゆったり目のチノパンを挙げているけれど、それだけではなく派手めなプリントのワンピースを着るおばさんもいるし、ジュエリーをたくさん着けるおばさんもいるわけで、それらを全て取り巻きながら、様々なバリエーションや個人の解釈を含めて Menocore だと。

 

でもところで一体、なんで今このスタイルなのだろう?この疑問に対して説得力があったのが  Ciao Lucia というブランドのデザイナー、Lucy Akin の言葉。

 

When the state of the world, or the political climate, feels uncertain, it’s only logical that we would want our clothing reflect ease, maturity and confidence. I turn 30 next year, and with Ciao Lucia, I was channeling an older version of myself who has life a little more figured out.

 

世の中や政治が不安定な時期、ファッションに気楽さや成熟、そして自信を求めるのは理にかなっている。私自身も30歳を目前に、自分のブランドと向き合いながら、今より歳を重ねて人生がもう少し見えている自分に関心が向いている。

 

これだ!と思った。もう大人になってだいぶ経ち、酸いも甘いも自分の好き嫌いもさすがによくわかっている。パッとしない世の中になって久しい今のご時世、今より自信もゆとりもある未来の自分を見据えるようになっていることに気づかせてくれた。

 

Menocore がしっくりくるのにはもう一つ理由がある。私は30歳を過ぎてだいぶ経つけれど、ファッション業界にいるのもあり、トレンドはある程度把握していないといけない。ただ、トレンドを作り出す世代からはもうかなり遠のいているのが事実。ミレニアル(1980年代 〜 1990年代生まれ)はもうトレンドの中心ではなく、その下である ジェネレーション Z が注目するトレンドを突拍子もないと感じつつもギリギリ受け入れられる範囲で乗っかっていることに疲れ始めている。

 

New York Magazine called normcore, “The aesthetic return to styles [we] would’ve worn as kids reads like a reset button—going back to a time before adolescence, before we learned to differentiate identity through dress.” In fascinating contrast, menocore is the aesthetic leap to styles we would embrace as middle-aged women, taking us forward in time to a more marinated version of our selves, our mothers and our world.

 

ファッションでアイデンティティを主張することを覚えたのよりずっと前、思春期以前のスタイルに戻るかのように、まるでリセットボタンを押すのが Normcore あった。それとはおもしろいほど対照的に、Menocore は今の自分たちが世代を先越して中年の女性のようなスタイルを楽しむ考えで、自分自身、自分の母親の姿、そして自分たちの世界といったもののもっと成熟した状態へと導いてくれる。

 

ファッションを知らない頃に戻ったようなスタイルが Normcore であるのに対し、ファッションを楽しんだ後の未来に飛ぶのが Menocore ということ – 実におもしろい!私はこの考え方はとても新鮮で好きだ。肩に力が入っていないながらも自分らしい心地よさを表現することができるのじゃないかな。むしろ、自分の「今まで」と「今」を少し先の自分に投影できる、自分の人生を感じられるスタイル。

 

私がここのところ好きなブランドのアイテムにもそういったアイデアを感じられるものがいくつかある。

 

Lauren Manoogian のカシミア パンツ。

 

https://laurenmanoogian.com/products/cashmere-felt-pants]

 

Black Crane のコットン ドレス。

 

https://blackcrane.net/collections/women/products/classy-dress-cld-27-mustard]

 

Ilana Kohn のリネン ジャンプスーツ。

 

https://ilanakohn.com/collections/jumpsuits/products/gary-jumpsuit-coal]

 

Suzanne Rae のプラットフォーム サンダル。

 

https://shop.suzannerae.com/collections/shoes/products/platform-maryjane-black-velvet]

 

今の私が想像できる、きっと20年後の私が選びそうなもの。尖ったデザイナーの服にはもう興味がなくなり、柔らかい着心地と計算された型、そして上質な素材を求めた私がおそらく着ているであろうスタイル。

 

 

Menocore がトレンドやバズワードになるかはわからない。しかし、私はこの ManRepeller の記事を読んで、もどかしさや難しさを感じている今の年齢の自分が、未来の成熟した自分に何かを投影しているのかもしれない、ということに気づくことができた。20年後の自分は実際にはまだ見えないけれど、理想を投影するだけでも前向きで明るい未来を感じられるんじゃないかな。

 

最後に、「ファッションは繰り返す」と言われるように過去のトレンドが戻ってくることが多いけれど、 Normcore も Menocore も自分自身の人生の時間軸を巡るスタイルの捉え方であることを強調したい。トレンドとは切り離して自分の人生と向き合っているファッションの方がずっとおもしろい。だからこそ、ファッションは誰のためでもなく自分のものであるべきだと改めて感じた。

 

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