肌荒れや、皮膚ガンなど将来的なリスクを防ぐため、年間通して毎日つけることを心がけるようになった日焼け止め。
エシカルで、できるだけクリーンなビューティへの切り替えをしているここ最近、日差しが強くなる夏に向けて、日焼け止めについて改めて調べてみることに。スタート地点として、曖昧な知識しかなかったケミカルサンスクリーンとミネラルサンスクリーンや、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の違いをリサーチしていたら、知らなかったいろんなことが見えてきた。
※ 日本でよく「ノンケミカル」と呼ばれているもののほとんどが、ここでいう「ミネラル」に当たります。
※ とはいえ、ミネラルも含めて自然由来の、よく「ナチュラル」などと言われる成分であっても、化粧品に配合されるのは化学化合物、つまりすべてケミカルであり、「ケミカル」「ノンケミカル」は語弊がある呼び分け方だとは個人的に思います。
1. ケミカルサンスクリーン とは?
紫外線を吸収する成分で紫外線から肌を保護する日焼け止め。紫外線吸収剤として一般的によく使用されるのは以下の成分。
- オキシベンゾン (oxybenzone)
- オクチノキサト (octisalate)
- アボベンゾン (avobenzone)
- ホモサレート (homosalate)
※ 私はアメリカ在住のため、FDA(アメリカの食品医薬品局)で認可されている成分から主要なものを抜粋しました。
メリット: その他の成分との配合がしやすく、肌の上に透明にのび白浮きしにくい製品がつくりやすい。
デメリット: 人によっては紫外線と紫外線吸収剤の化学反応が肌への刺激となり、炎症を起こす可能性もある。汗や水で流れて目に入ると、痛みを感じる方々もいる。
2. ミネラルサンスクリーンとは?
無機的(ミネラル)な成分で紫外線を散乱・反射する成分で紫外線から肌を保護する日焼け止め。英語では physical (物理的)sunscreen とも呼ばれることもある通り、肌の表面を紫外線散乱剤が覆う。紫外線散乱剤として多く使用されるのは以下の成分。
- 酸化チタン (titanium dioxide)
- 酸化亜鉛 (zinc oxide)
メリット: ケミカルサンスクリーンより比較的肌に優しい成分とされており、敏感肌でも炎症を起こしにくい。
デメリット: ミネラル成分の色が肌の上で白っぽく残りやすい。
つまりは、ケミカルサンスクリーンとミネラルサンスクリーンの違いは、
- 配合される成分
- 紫外線からの保護機能の仕方
- 肌の上での見え方
- 肌へのやさしさ
これらを踏まえた上で、どちらを選ぶべきかな、とさらに調べていたら、驚くべき事実を学んだ。
3. ケミカルサンスクリーンの問題
2018年、ハワイ州でケミカルサンスクリーンに関する規制が可決された。
参考記事: 米ハワイ州、サンゴに有害な日焼け止め禁止へ(BBC ジャパン)
これによって、ハワイ州において先ほどあげたケミカルサンスクリーン成分の内もっとも代表的なものである2つ、オキシベンゾンとオクチノキサトが含まれる日焼け止め製品の販売・流通が、2021年より禁止されるそう。
理由は、この2つの成分は海の生態系の上で重要な役割を担うサンゴ礁を白色化など損傷するから。海水浴客がこれらの成分を肌に塗布した上で海に入ることで起きるサンゴ礁への、ひいては海洋生態系へのダメージを止めることが目的。
知らなかった!
似たような法案は、アメリカのハワイ州の他にも、カリブ海のオランダ領ボネール島、太平洋の島国パラオ、そしてメキシコの一部の自然保護地区で可決されているそう。
参考記事: パラオ、有害成分含む日焼け止めを全面禁止 世界初(BBC ジャパン)
私はあまりビーチには行かないけれど、それでも日常的に、サンゴ礁に有害とされる成分を塗った後シャワーを浴びたら、それは最終的には海に流れ入る。結果、同様にサンゴ礁に影響を与える可能性がある。
【2023年5月追記】
オキシベンゾンとオクチノキサトが配合されていないからといって、サンゴ礁や海洋生態系への影響がないとは科学的に言い切れないという情報をよく見かけるようになった。
まだ不確かな部分が多いようだけれども、酸化チタンとノン・ナノ処方酸化亜鉛(活性酸素を引き起こすと言われているナノ粒子処理をしていない)の2つは、おそらくサンゴ礁への影響がないか、極めて低いという考えが、現在のもっとも信頼できるコンセンサスなよう。
参考資料:
Reef Safe Sunscreen Guide (Save the Reef)
Does “Reef-Safe” Sunscreen Actually Protect Our Oceans? We Asked Derms (Byrdie)
4. ミネラルサンスクリーンを選ぼう
そもそもケミカルサンスクリーンより肌にやさしくて、そのうえ自然環境への害も少ないと聞いたら、これからはミネラルサンスクリーンを使いたいと思うように。そこから、私のミネラル サンスクリーン探しが始まった。手当たり次第お店やオンラインで色んな日焼け止めを見てみた結果、アメリカでミネラルの日焼け止めを選ぶにあたって大まかに2つのポイントに気づいた。
- 商品名に “mineral” を含む
- 商品の “active ingredients” の項目に “titanium dioxide” もしくは “zinc oxide” と書いてある
- パッケージに “reef safe”(リーフ・セーフ、サンゴ礁に安全)や “reef friendly”(リーフ・フレンドリー、サンゴ礁にやさしい)と書いている
まず一番に、簡単にケミカル サンスクリーンとの区別をするために、ミネラル成分でできた日焼け止めの名前には “mineral” という言葉が含まれていることがほとんど。
ただしそのうえでさらに注意が必要なのは、実際の “active ingredients”(有効成分)を見てみること。私自身実際に、商品名に “mineral” が含まれていつつも、主となる有効成分はケミカルサンスクリーンでそこにミネラルサンスクリーンを少量混同したものをいくつも見つけた。つまりは「ミネラルサンスクリーン入りのケミカル サンスクリーン」ということ。アメリカではそういったタイプを “hybrid suscreen” (混合型日焼け止め)と呼ぶこともあるよう。
紆余曲折の末、私が気に入っている日焼け止めは、有効成分がすべてミネラルのもの。
→ ここからは2023年5月に書き直したアップデート版。この記事がもともと書かれた時から数年経って、ミネラルサンスクリーンでありつつ白浮きがほとんど気にならないものを見つけた(私の肌色での判断に過ぎないけれども)。この2つはアメリカの商品なので、アメリカに住む読者の方々の参考になるかな、と思うとともに、日本からも iHerb で買えるので手に入りやすいかも。ちなみに、私は顔につかっています。
※ アメリカは連邦で SPF (UVB への効果) の表記は必須だけれど、日本のように PA (UVA への効果) の表示は求められておらず一般的ではない。UVA と UVB のどちらからも保護するという意味で “broad spectrum” という表記はよく見かける。
※ 日常的な使用なので SPF30から50を選んでいる。日中の塗り直しの方が大事みたい。
Mineral Sunscreen SPF 50 | Pipette
Mineral Sunscreen SPF 50 | Pipette
有効成分: ノン・ナノ酸化亜鉛(non-nano zinc oxide)20%
効果: SPF 50, broad spectrum
その他のポイント: ノン・ナノ処方、無香料、敏感肌処方
使用感・感想
チューブから出した瞬間は、ミネラルサンスクリーンにありがちな重めなテクスチャと真っ白な見た目なのだけれど、肌にのせてささっと伸ばすと、今までのミネラルサンスクリーンのイメージを覆すほど、ほぼ透明に近い状態に。
植物性のスクワランを配合しており、伸ばしきったあともしっとり感が残る。肌がツヤっぽい仕上がりになるので、メイクアップの下地も兼ねちゃう。私は乾燥気味なので潤いがある仕上がりは個人的には好きなのだけど、テカリや脂浮きが気になる方には、向かないかもしれない。
Force Shield Superlight Sunscreen SPF 30 | Hero Cosmetics
Force Shield Superlight Sunscreen SPF 30 | Hero Cosmetics
有効成分: ノン・ナノ酸化亜鉛 (non-nano zinc oxide) 17.53%
効果: SPF 30, broad spectrum
その他のポイント: ノン・ナノ処方、赤みの視覚的補正効果、敏感肌処方、ニキビ肌処方
使用感・感想
こちらの方が比較的軽めの使用感。ジェルっぽいテクスチャでみずみずしい。これも、ささっと伸ばしただけで白さはほとんど消える。
ミネラルスクリーンなのに、こちらもほぼ透明になるのは素晴らしい。でもその分、うっすら緑色を含む赤みの視覚補正効果は、ほとんど期待できなかったかな。上の写真にもすこし映っている、私の肌に出ていた赤みは、ほぼそのまま。
どちらもミネラルサンスクリーンのおおきなデメリットである白浮きがきわめて見られない。多様な肌の色の人びとが、よりミネラルサンスクリーンをつかいやすくなっていくといいな。
皮膚の炎症や皮膚ガンを予防するために塗布する日焼け止めは、しっかり調べるべきだし、その情報は多くの人々が得えやすい状態にあるべき。そして自分のためだけではなく自然や動物にも優しいものを選びやすい環境(アクセシビリティや価格)も、必要だよなぁ。
私自身、今回書いた内容を調べるのには結構な時間を要したので、すこしでもほかの人たちがリサーチする上で助けになったらうれしい。もし気になる点や、誤った情報が含まれているようであれば、是非お問い合わせください。
THE LITTLE WHIM は化粧品における動物実験に反対しています。取り上げる化粧品は2018年9月以降、クルエルティフリー(cruelty free: 動物実験をしていない)に限定しています。