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COOKIEHEAD が好きな本 日本語小説編

 

珍しいリクエストを頂いた!私の好きな本について書いて欲しいとのこと。メッセージを頂いてまずは日本の小説について書こうと思ったけれど、最近あまり新しく日本語の本を読んでいないことに気づいた。

 

私は2013年にニューヨークに引っ越した際、某運送会社の「単身パック」みたいな船便を使って10個弱のダンボールにものを詰めた。必要なものを厳選する中で大幅に処分をしなくてはいけなかったのが、本。かなり思い切ったふるいにかけて、ほとんどは古本屋の査定用のダンボールに入れて、本棚を空にしていった。パッキングしたのは20冊程度。

引っ越してきてからは、日本の書籍はニューヨークにある紀伊国屋で買えるけれど、高価なのであまり買わなくなっちゃった。私が持っている電子書籍アカウントで買えるのはアメリカ国内の出版のみだし。

なので、ニューヨークで今持っている日本語の本は本当に思い入れがあるものばかり。ほとんどが小説で、初めて読んだ時のことを覚えているし今も時々読み返す。そうゆう本って、誰にでもあるよね?私の特別な日本語の小説について、今日はぼんやり書いていきます。

 

 

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中学生の時に読んで衝撃を受け、理解ができないことが多くて何度も読み返した本。失くしたり人に貸したままになっても、何度も買いなおした本。

太宰治の「斜陽」は、戦後の没落する上級階級の家族を描いた純文学。大人になった今読み返すと、現代の社会にも当てはまる部分が多い気がする。戦後ほどの劇的な変化はないにせよ、社会の風潮と個人レベルでの価値観は常にアップデートされていくもの。新しい考え方が誕生し紹介されて、批判されたり議論されながら、受け入れられる強いエネルギーが生まれていく。

「斜陽」の中でかず子とその家族が送った人生や下した決断は、周りからは没落と捉えられ、よく思われないものだった。しかしそれは新しい何かの始まりであって、かず子は決して悲観や絶望を抱いていない。これが私の生きる道、と言わんばかり、前を向こうとする。

私は今ニューヨークという前衛的な街にいて、追いつけないほど新しい xx 主義が生まれていくこの社会を、「斜陽」が描いた戦後の日本と重ねながら考えることがある。世間が思ういいとか悪いばかりではなく、自分自身がどうありたいかを理解し、自らの決断を信じることが重要だと、気づかせてくれる。

 


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こちらも中学生の頃読んだ、吉本ばななの「哀しい予感」

幼い頃の記憶がなかった19歳の主人公が、自分の家族のことを少しずつ思い出していくストーリー。タイトルがいう哀しい予感を、主人公の弥生は自分でしっかり消化していく。登場人物にとって哀しい事実はたくさん出てくるけれど、皆がそれぞれ違う形で優しくて、思いやりがあって、一生懸命で、前を向いている。10代ではまだよくわからなかった「もどかしい」とか「切ない」とか「やるせない」という気持ちを、しっかり受け止めて飲み込むことをおしえてくれた気がする。

初めて読んだ当時、19歳の弥生はおねえさんだったのに、私は今、その主人公の30代のおば、ゆきのの方が歳が近くなった。人生との向き合い方は年齢を重ねるごとに人ぞれぞれ変化していき、小説の中の登場人物がとる行動や発する言葉への感じ方も変わってくる。しばらく読んでいなかったこの小説、久しぶりに読んでみようと思う。

 


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友人に薦められて読んだ西加奈子の「さくら」は、この後この著者の作品にどハマリしたきっかけの一冊。(でも「さくら」が今でも一番好き。)

一般的な家庭の中で起こりうる問題や悲劇が重なって、一人一人が崩れていく。悲しいし、やりきれない気持ちにもなりそうなことが続く。でも物語の中に、西加奈子は、登場人物の一人一人が強さや前向きさを見つけるヒントを散りばめている。それは偶然なのか個人の努力なのかはわからないけれど、とにかく長いトンネルの先には光があると信じたくなる。

かけがえのない家族。それが見えづらくなっている時ふと絆になる愛犬のサクラの存在。正直でがむしゃらなのに、時々かっこつけたかったり逃げたくなる気持ち。そんな色んなものが、読み進める中で感情として湧き上がっていつも感極まってしまうこの本は、すごく特別。

 


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紹介する中で私にとっては社会派寄りな一冊。初めて読んだ時のあと味の悪さは今でも忘れられない。

吉田修一の「パレード」は、ルームシェアする男女5人の物語。それぞれのキャラクターも5人の関係性もしっかり描かれている中で、徐々にズレが生じてくる様子が音を立てるように伝わってくる。とにかくこわい。同著者の「悪人」や「怒り」も読んだけれど、それらが描く常軌を逸した状況ではなく、あくまで普通に生活する中で一定の距離を保ち仲がいいように見えつつも、実際には全く干渉がない関係性だからこそ起きる出来事や止められない事件。

ルームシェアという環境ゆえの特異な距離感というのはあると思うけれど、これは学校や職場など、どこにでも置き換えることも可能な人間関係の不可解な溝を浮き彫りにしていると思う。無干渉であることはいいこと?悪いこと?と考えさせられる。

 

 


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こんなに幸せな気持ちになる本は他にはない、と思うのが、吉田篤弘の「それからはスープのことばかり考えて暮らした」

月並みな言葉だけれど、疲れていたり何かに行き詰まっている友人にただただ薦めたくなる小説。「名前のないスープ」をめぐり登場する人たちが皆すごく丁寧に描かれていて、本当に愛すべき人たちばかり。とはいえそれぞれがユニークでユーモラスで、微笑ましい変な人たちといった感じ。距離感もちょうどよくて、だからこんなに自然なのかな、と感じる。

これを読み終わる頃にはこの「名前のないスープ」の優しい風味や舌触り、温かい湯気、手に触れる器の感触など、全てが自分の理想的なものになっている。そう、まるでジブリ映画に出てくる料理のように。

 


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これはニューヨークのブックオフで購入した一冊。ニューヨークに引っ越す直前に、この小説の舞台である小豆島に家族で訪れた思い出があり読んでみたくなった。

壮絶な逃避行劇である角田光代の「八日目の蝉」は、母性という深いテーマを描く作品。我が子ではない赤ん坊を訳あってさらってしまった主人公の希和子は、「我が子」との生活を意地でも守り抜こうとする。自分たち以外には何もなく、将来的にその生活を維持するのは不可能なのもわかっていながらも、ただ執念のみで繰り広げられる2人の旅。

小豆島に辿り着いてからの部分は特に、無防備に溢れる自然と無垢で素朴な人間関係が、希和子たちを更に孤独にしていく気がした。迎え入れられているはずなのに、絶対にバラせない大きな秘密を抱えた希和子が作らなくてはいけない壁は、皮肉にも無干渉な都会よりもっと高く立ちはだかっている。

すごく切なくて苦しい物語だけれど、人間の持つ弱さとそこから生まれる執念が感じ取れる作品であり、そして描かれている小豆島が悲しくなるほど美しい。

 


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最後もニューヨークで読んだもの。原田マハの「楽園のカンヴァス」はこちらで日本人の友人に譲って頂き、その関連作である「暗幕のゲルニカ」は紀伊国屋で購入した。

かつてニューヨークの近代美術館(MoMA)に勤務していたこともある著者は、近代美術への造形が深い。「楽園のカンヴァス」は、MoMA が所蔵するルソーの作品「夢」を巡る壮絶なドラマを描く。20世紀前期のルソーやピカソが生きた時代の物語が繰り広げられていき、この画が辿った道の物語を読み進めるのは純粋に楽しい。読後に MoMA に訪れた際に「夢」を再び見た時には今まで感じたことがなかったパワーあった。

そこから興味を持ち読んだ「暗幕のゲルニカ」は、もっと政治色が強い作品。高校の倫理の教科書に載っていたピカソの「ゲルニカ」を、大学生の時に実際にマドリードのソフィア王妃芸術センターで見たことがある。想像以上に大きくて、想像以上に複雑な感情が織り込まれていた。この画が持つ強い反戦のメッセージを、物語を通してより感じることができる。ピカソが込めた思いは確実にもっと強く私の中に根付いたし、アートは賞美のためだけではなく、シリアスなメッセージを伝える手段でもあることを知った。今再びマドリードに訪れて「ゲルニカ」を再見したい。

 

 


 

直木賞や芥川賞、本屋大賞などの作品もたまに読むけれど、私にとって本当に大切だったり純粋にエンターテイメントとして楽しめる小説だと思っているのはこの8冊。もっと新しい本にも出会わなきゃとも思うので、もしオススメがあったらおしえてくださいね。

 

近々、外国語編やアート本編などもお送りする予定。

 

 

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