植物性ミルク、よりサステナブルなチョイスはどれ?

昨年11月の記事、「牛乳からスイッチ!コーヒーに合う植物性ミルク」では、アメリカで身近に見つけられる植物性ミルクを、DIY の方法とあわせて紹介した。

今日は、その続編。種類が豊富で、味の好み、栄養、価格、手に入りやすさを考えたらただでさえ複雑に見える植物性ミルク。更に、それぞれの持つ特徴からくるサステナビリティの観点も加えて、考えてみたい。

植物性ミルクを選ぶメリット

「そもそも牛乳をやめてエシカルでサステナブルな植物性にしたんだから、それでいいんじゃないの?」

その通りだと思う。植物性であるということは、乳牛の酷使・搾取がないミルクを選んでいることになる。そして環境への負荷を考えても、植物性ミルクは牛乳に比べてずっとローインパクトな選択と言える。

mj
courtesy of Mother Jones

例えば水について – Mother Jones の資料によると、牛乳1ガロン(3.8リットル)を得るのに、683ガロン(2,600リットル)の水を必要とするそう。いまいちピンとこない数字だけど、算数が苦手な私にも、 683(水)から得られるのがたった1(牛乳)っていうのが驚異的だというのはわかるぞ。とにかく、牛はいっぱい水を飲む、そしていっぱいごはんを食べる牛の飼料を育てるのにもいっぱい水がいるから、とにかくめっちゃいっぱい水を使う!ということだ。

それに比べて植物性のミルクは水の使用をかなり抑えられるし、あわせて土地の利用も大幅に減らすことができる(これについて詳しい数字はのちほど)。

哺乳類の動物である牛を育てるのに必要な大量の水と餌、広大な土地、ミルクを出すための人工妊娠や出産、毎日の搾乳、というステップがなくなる植物性は、総合的にみて確実にエシカル・サステナブルな選択だ。

それぞれの植物性ミルクの環境負荷

私は個人的には、最初は豆乳、次はアーモンドミルクなどのナッツ系を経て、今はオートミルク(オーツ麦のミルク)が好き。コーヒーにもよく合う。

ところが、昨年はじめに BBC による “Climate change: Which vegan milk is best?” の記事を読み、それまであまり考えてこなかったそれぞれの植物性ミルクが持つ特徴から来る環境への負荷の違いについて知った。

参考記事:Climate change: Which vegan milk is best? (BBC)

105755173 milk alternatives updated optimised nc 1
courtesy of BBC

縦: 【上から】牛乳、ライスミルク、豆乳、オートミルク、アーモンドミルク
横: 【左から】温室効果ガスの排出(赤)、土地の利用(黄色)、水の利用(青)

オックスフォード大学の研究結果に基づき、コップ1杯(200ミリリットル)当たりで、それぞれの項目を比較している。再び細かい数字は抜きにして数字の大きさを比較しただけでも、3項目全てにおいて、牛乳は断然環境負荷が高いのがまずはわかる。

ではその他の、植物性ミルクの数字はどうだろう。植物性ミルクは全体的に、牛乳とは比べものにならないほど環境負荷が低い点がいくつも見つかる。しかし植物性ミルクだけに絞ってみた際、豆乳とオートミルクに比べて、ライスミルクとアーモンドミルクは項目によって結構数値が高いぞ、というのがうかがえる。特に、ライスミルクは温室効果ガスの排出と水の利用が多く、アーモンドミルクの水の利用はかなり多いみたいだ。

うーん、気になる。

3つの植物性ミルク、比べてみた

植物性ミルク、と一口に言っても種類がたくさんあり、特徴が異なる。牛乳にも無脂肪乳・低脂肪乳や加工乳といった種別があるとはいえ、基本的に牛からきているものであるのと比べると、かなり違ってくる。

タンパク質やカルシウムのソースとして牛乳や乳製品を摂っていて、そこから植物性に移行する場合は、原料が重要になってくる方もいるはず。同じ原料の植物性ミルクであっても、どうやら製造方法によっても栄養成分は違ってくるみたいだからややこしい。そして価格や手に入りやすさも、何を選ぶかの上で影響するだろう。

あくまでそれぞれが自身に合う植物性ミルクをチョイスするべきだと思うけれど、今回は環境への負荷にも重点を置きながら、豆乳・アーモンドミルク・オートミルクを比較したい。この3つはアメリカで今ではどこでも手に入りやすくなっているし、日本にも取り扱いが多かったり増え始めていると思う。 FoodPrint の “Which Plant-Based Milk Is Best for the Environment?” という記事を参考にまとめてみる。

参考記事: Which Plant-Based Milk Is Best for the Environment? (FoodPrint)

※ この記事は Life-Cycle Assessment という指標で、原料の生産から加工、そして輸送における、温室効果ガス、水の利用、土地の利用、化学物質の流出、地質の劣化を元に環境負荷を出している。

1. 豆乳

soymilk

まずは豆乳から。ヴィーガニズムだけでなく、乳糖不耐症の人の選択肢としても、日本や世界の多くの国で早くから市場に出回っていた豆乳。原料である大豆は世界中で生産されている。

長所

  • 味、テクスチャと栄養分は牛乳と比較的似ている
  • タンパク質を多く含む
  • 総合的に表面から見える環境負荷は少ない

短所

  • 大豆の生産(これは家畜の飼料用の方が多くを占めていると個人的には思うけれど・・・)は増加しており、森林伐採が進み環境破壊を懸念する声も多い
  • リン酸肥料の使用が盛んで地質が再生できなくなる
  • 農薬が多く使用され地球・人体どちらへも影響する

メモ

特にタンパク源となる植物性ミルクの代表的な選択肢として優位。「無農薬」「遺伝子組み換えでない」といった表記や、大豆がどこで生産されているかに気を配ることがポイント。

2. アーモンドミルク

almondmilk

最近は日本でも一般的なスーパーマーケットやコンビニで購入できるようになってきた印象のあるアーモンドミルク。世界のアーモンド供給の80%はカリフォルニア産。

長所

  • カロリーが低く糖分が少ない
  • カルシウムを多く含む
  • クセがなく料理にも使いやすい
  • 木になるため土地の利用を抑えられ、温室効果ガスの排出も比較的少ない

短所

  • 栽培に大量の水を要する(これはどのナッツにも共通しているそう。そして、毎年干ばつが起きるカリフォルニアで生産されているという事実も忘れてはいけない)
  • 加工にあたりアーモンドに含まれるビタミン類の栄養素は逃げてしまう
  • 近年の需要増加に伴い、受粉に用いられる蜂の酷使が問題になっている(詳しくはこちら

メモ

アーモンドの栄養の多くは除かれてしまい、飲料として加工されたもののほとんどは水。含まれる栄養素は加工の際に足されている割合が多い。栽培に大量に水を必要とする負荷がある割りに、最終的な製品にはあまりアーモンドの栄養素は少ないことを考えると、アーモンドミルクはあまりサステナブルな選択肢とは言えない。

3. オートミルク

oatmilk

ここ数年でアメリカでは急激に目にする機会が増えたオートミルク。オートミールはアメリカ人の朝食の定番の一つであるように、オーツ麦はアメリカではとても馴染みがある穀物。

長所

  • 大豆アレルギー・ナッツアレルギーがある人も飲める
  • 繊維、タンパク質、カルシウム、ビタミン、ミネラルを豊富に含む
  • クリーミーさがありコーヒーやお菓子作りに向いている
  • 総合的にみて表面的に見える環境負荷は少ない

短所

  • アメリカのオーツ麦栽培にはグリホサート(例: モンサント社の農薬のラウンドアップ)が多く使用され、環境・人体どちらへもの悪影響が懸念される

メモ

味・栄養価・サステナビリティのどの点においても高得点。「無農薬」「グリホサート不使用」といった点に気を配ることがポイント。

COOKIEHEAD のチョイス

私は元々オートミルクの味とコーヒーとの相性のよさが好きだったので、調べた結果オートミルクは環境への負荷も少ないと知り嬉しい。ただ、(悪名高き)モンサントの農薬の件は気になるので、今後注意しながら、オートミルクを選んでいこうと思う。

ちなみに前回の植物性ミルクの記事に登場したオートミルク2ブランドについて調べてみたところ、以下の通り

Oatly (https://us.oatly.com/
– オーガニック  ×
– 遺伝子組み換え不使用  ○
– グリホサート不使用  ○

Planet Oat (https://planetoat.com/)
– オーガニック  ×
– 遺伝子組み換え不使用  ○
– グリホサート不使用  ?(記述が見つからなかったので、使用しているかも)

あとは、逆にかつてのお気に入りだったアーモンドミルクは、あまり環境に優しくないことが発覚して残念。今も時々飲むことがあったけれど、考えちゃうな・・・。

今後は、自分で材料を選んで自宅でもっと植物性ミルクの DIY をしていきたいな、とも思っている。

最後に

繰り返しになるけれど、牛乳から植物性ミルクにシフトしている時点でまずはエシカル・サステナブルへの大幅な前進。さらに飲料としてだけでなく、ヨーグルト、チーズ、アイスクリームなどの乳製品も植物性の選択肢が増えているのは素晴らしいこと。

そして植物性ミルクの需要は拡大しており、今後の生産・製造工程が変わる可能性もあり、環境負荷のチャートもそれに伴い変わってくるかもしれない。それがまた新しい問題を産む可能性も大いに秘めているので、人間が酪農で犯してしまった間違いを繰り返さないようにしたいものだ。

情報に積極的に触れ、すでに牛乳よりよいチョイスである植物性ミルクを、更によいものにしていけるといいな

Share on twitter
Share on facebook
Share on linkedin