生まれてこのかた大きな病気はしたことがなく、標準的に健康体である私。ところが一つだけ、ここ1年くらいで知った自分の体の問題と、今向き合っている。
それは・・・ヒスタミン不耐症 (Histamine Intolerance)。
正直、自分が診断されるまで聞いたことがなかった。私の場合は症状がすごく重いわけではないので、生活に困るようなことはない。とはいえ、改善したい。
もしかしたら私と同じような症状に悩みつつ、原因がわからないけれど軽症状だし….. と思っている方もいるかもしれないので、私の視点からこの現象について書いてみる。私は約2年前からベジタリアン、ここ1年半以上はヴィーガンになりプラントベース(植物性食品のみで動物性食品を摂らない)の食生活を送っているので、そのなかで薬に頼り過ぎないよう私が取り組んでいることもあわせて。
私は医学や栄養学の専門家ではないので、あくまで「インターネット上で見る経験者による情報ソースの一つ」としてとらえ、心あたりがある方はご自身で調べ、専門家に相談してください。
私は自分でリサーチしつつも、病院に行き、私のケースに沿って受けた専門的アドバイスに従っています。
食事からの改善において気をつけたい食品のリストアップにおいては、医師やインターネットからの情報を参考にしつつ、プラントベース栄養学を学び、LAでパーソナルトレーナーとして活躍されている Marie さんにもご協力いただきました。ホールフードプラントベースを軸に体と向き合う彼女のメッセージから、私はいつもたくさん学びをもらっています。Marie さんの Twitter はこちら!
具体名には触れませんが、医師から処方された薬においては、薬学のドクターである義兄にも別途意見をもらっています。
発覚した経緯
去年の夏くらいから、体の皮膚に痒みを感じることが多くなった。腕、背中、腹、脚に、痛いほどではないけれど無視できない痒さが、突然ぶわ〜〜っと皮膚の下から湧き上がってくる感じ。寝ている時でも目が覚めるほどで、まぁしんどかった。どうしたらいいかわからないまま、氷を当てたり、鎮静効果のあるバームを塗ったりして、あとは意識を痒さから逸らせて掻かないように、んぐーーーーーと堪えていた。
というのも、掻けば掻くほど痒くなる上に、掻いてしまうと、その痕がくっきり残るのだ。しかもこれが、結構びっくりするくらいに。
猫(もしかしたら他の動物も?)に軽く引っ掻かれたり噛まれた時、切り傷ともいえないけれどいわゆる「ミミズ腫れ」と呼ばれる線のような跡が残る経験がある方はいるかもしれない。それに似た痕が、自分の5本の指がしきりに掻いた跡として全部残るので、かなり広範囲で「ミミズ腫れ地帯」みたいなのができてしまっていた。数十分〜1時間くらいでその腫れは治るけれど、発生する回数がだんだん頻繁になり、いよいよ、これはおかしいと心配になった。
多くの方が見たいものだとは思わないので、症状をとらえた写真は載せません。次の項目で出てくる皮膚症状の具体名でインターネット画像検索すると出てきます。
皮膚科に行ってみた
重い腰を上げて、皮膚のことなので、皮膚科に行った。
診察中に症状が出ていたわけではないので、状況を説明しつつ、背中に「ミミズ腫れ地帯」が発生した時の写真を見せた。そしたらその途端に担当医の口から出てきたのは、
“Oh, this must be Dermatographia.”
「あぁ、これは皮膚描記症ですね。」
専門的な言葉や内容がわからないと不安で、英語で診察を受けるのは苦手。でもこれは、聞いた際に頭の中で電球のひらめきマークが出たほど明快な呼び方でびっくりした。私にもわかる!
“derma” とは「皮膚」のこと。”graphia” とは「描く」ということ。
つまりは「皮膚に描いちゃう」。あとで調べてわかった日本語の症状名「皮膚描記症」からも明らか。つまり、皮膚の表面を掻くと、画を仕上げられるほど、痕が残る皮膚の炎症。
そして、皮膚描記症の原因としてはヒスタミン不耐症の疑いが高いと思われる、とアドバイスを受けた。
ヒスタミン不耐症とは
ヒスタミン不耐症 (Histamine Intolerance) は、噛み砕いて言えばアレルギーに似ていると考えてよいと言われた。とはいえ、ピーナッツアレルギー、大豆アレルギーや金属アレルギーのように、なにか特定のものにアレルギー反応を起こすのともまたちょっと違うようだ。皮膚科医いわく、ヒスタミンそのものは食品から摂取されるのにくわえ、特にアレルギー反応が起きた時に自分の体内でも作られる化合物だそう。ん?ではそれに対してどうして、不耐症になるの?
病院で言われたヒスタミン不耐性発生の現象は失念してしまったので、アメリカの権威ある栄養学ジャーナルの一つである(らしい!)、 The American Journal of Clinical Nutrition による論文 “Histamine and histamine intolerance” から以下を抜粋。
Histamine intolerance results from a disequilibrium of accumulated histamine and the capacity for histamine degradation. The main enzyme for metabolism of ingested histamine is diamine oxidase (DAO) . An impaired histamine degradation based on a reduced DAO activity and the resulting excess of histamine may cause numerous symptoms mimicking an allergic reaction.
ヒスタミン不耐症は、蓄積されたヒスタミンとヒスタミン分解能力の不均衡に起因する。 摂取されたヒスタミンの代謝の主な酵素は、ジアミンオキシダーゼ (DAO) である。 DAO活性の低下に基づくヒスタミン分解の障害と、その結果生じる過剰なヒスタミンは、アレルギー反応を模倣する多くの症状を引き起こす可能性がある。
“Histamine and histamine intolerance” (The American Journal of Clinical Nutrition)
THE LITTLE WHIM 訳
ほー。つまり、食べ物から摂取、もしくは体内で生成されたヒスタミンが、必要な酵素が足りない(もしくはそもそも過剰である)ため分解されず、私の場合はそれが皮膚の痒みとして表れているのか。これが原因で起きる皮膚の症状は、皮膚描記症として表れるケースが多い、とも皮膚科医は言っていた。
ちなみに私が持っている肌の痒み以外に、ヒスタミン不耐症の症状として一般的なのは・・・
- 下痢
- 頭痛
- 鼻結膜炎
- 喘息
- 低血圧
- 不整脈
- 紅潮
参考文献: “Histamine and histamine intolerance” (The American Journal of Clinical Nutrition)
私がヒスタミン不耐症である可能性は高いけれど、確かではないとも告げられた。まずは抗ヒスタミンの飲み薬と、症状がひどい時のための塗り薬を処方してもらい、様子を見ることに。ちなみに飲み薬は、薬局で処方箋なしで売っている花粉症用などの抗ヒスタミンの飲み薬とほぼ同じ内容とのことだった。
もしそれでも症状が治らなかったら、次のステップは血液検査。ただし、血液検査でヒスタミンやその分解酵素の量はわかるけれど、ヒスタミン不耐症の重度を測ることは難しいそうだ(多分そうゆうことだったと記憶している)。
薬を服用した
薬を飲み始めたら、一気に症状が出なくなった。あらー、じゃあやっぱりこれだったのね。
次に皮膚科医に会った時にもそれを報告し、ヒスタミン不耐症と考えてほぼ間違いないと診断された。
でもさ・・・薬を飲むと確かに症状が出ない。それは逆に言うと、薬を飲まないと次の日かその次くらいにはやはり痒くなる。じゃあ、私は一生この薬を飲まないといけないの!?
藁にもすがる思いだったけれど、残りの人生、藁にすがり続けたくはない。
そこで、皮膚科と、そして定期健診で行く病院でもそれぞれ担当医に相談したところ、薬の服用で症状を抑えるのにくわえ、改善は食事からが最も有効的であるという希望をもらった。それはプラントベースでも大いに可能なようだ。
低ヒスタミン食生活を始めた(ヴィーガン / プラントベース)
おさらいになるけれど、ヒスタミン不耐症は、a) 体内のヒスタミンが多過ぎる b) 体内でヒスタミンを分解する酵素が少ない このどちらかか、もしくはその組み合わせで症状が出る。
症状を抑えるために食事でできることは、ヒスタミンを多く含む食品を避けること。ほぉ、それはシンプルだ。医者からのアドバイスにくわえ、インターネット上でも言われている高ヒスタミン食品を調べてみた。プラントベースかどうかに関わらず、加工食品、発酵食品、保存食品にヒスタミン値が高いものは多いらしい。
1. ヒスタミンを多く含む食品
※一般的にプラントベースとしても手に入る食品には (pb) と記載
- ソーセージやハムなどの加工肉
- ツナやサーディーンなどの塩分を加えた缶入り魚食品
- ワインやビールなどのアルコール飲料 (pb)
- コンブチャ (pb)
- チーズやヨーグルトなどの発酵乳製品
- 味噌、醤油、納豆、テンペなどの発酵大豆食品 (pb)
- サワードゥブレッドなどの発酵穀物食品 (pb)
- ザワークラウトやキムチなどの発酵野菜 (pb)
- 缶詰などの保存食品 (pb)
- ピクルスや漬物 (pb)
- 茄子 (pb)
- ほうれん草 (pb)
- アボカド (pb)
- 酢 (pb)
加工肉や乳製品、缶入りの魚などは食べていなかったとはいえ、ヴィーガンとして好んで頻繁に食べていたプラントベースのものも結構あったのでびっくり… そして正直ショック。
さらに、プラトベース栄養学の目線から Marie さんに相談したところ、ヒスタミンを多く含むわけではないがヒスタミンの分泌を促す可能性がある、もしくはヒスタミンの分解を遅らせるため、注意が必要な食品もあることをおしえていただいた。
2. ヒスタミン不耐症の症状が出る
きっかけになり得る食品
※すべてプラントベースで手に入れることが可能
- トマト
- 柑橘系フルーツ
- パパイヤ
- いちご
- パイナップル
- ぶどう
- プラム
- バナナ
- 緑茶
- チョコレートなどのカカオベースの食品
- ピーナッツ、カシューナッツ、くるみ
- 酵母エキス
一方で、ヒスタミン不耐症を持っていても比較的安心して食べられる食品もあることがわかった。ヒスタミンを抑える上で重要なだけでなく、健康管理においても言われていることだけれど、保存料・着色料・高い塩分は避けた方がいいそう。
3. ヒスタミンが少ない/ない食品
※すべてプラントベースで手に入れることが可能
- 乾燥豆
- 玄米
- オーツ麦
- チアシード
- キヌア
- 無漂白小麦粉のパン
- りんご
- ざくろ
- マンゴー
- スイカ
- ブロッコリー
- カリフラワー
- クレソン
- ロメインレタス
- キャベツ
- 人参
- 玉ねぎ
- セロリ
- サツマイモ
- ニンニク
- 生姜
ほっ。ダメリスト見てがっかりしたけれど、安心できる食品には、高ヒスタミン食品から置き換えられるものも、元々好きなものもいっぱいあった。
食品リストの参考文献・記事:
“Biogenic Amines in Plant-Origin Foods: Are they Frequently Underestimated in Low-Histamine Diets?”
“Histamine and histamine intolerance” (The American Journal of Clinical Nutrition)
“A Histamine-Free Diet Is Helpful for Treatment of Adult Patients with Chronic Spontaneous Urticaria“ (Ann Dermatol)
“Histamine Intolerance” (Healthline)
“Low-Histamine Diet“ (Healthline)
“How I Feel After Switching to a Low-Histamine Vegan Lifestyle” (Bohemian Vegan Kitchen)
1 – 3 の食品リストにあるもので症状が発生するかどうかは、個人間で大きく異なると考えられます。あくまで参考として利用し、専門的なアドバイスを得てください。
低ヒスタミン食生活
1年ほど経過して
じっくり向き合っている中で、ヒスタミンを(多く)含む食品の摂取を完全にやめてはいない。例えば醤油や味噌などは和食では避けるのが難しいし、発酵食品は好きなだけでなく体にいいと言われているものも多い。なので量を気にかけたり、連続して食べることはないようにしている。そして、加工品はほどほどにし、ホールフードプラントベースを以前より意識するようになった。
それによって、処方薬の摂取量をここ1年でガクンと減らすことができた。大事な用事があって、痒くなってしまったらどうしよう・・・と不安な時はその事前に処方量の半分を飲んでいるけれど、基本的には薬を定期的に服用せず症状がある際のみにしている。
(ただしこれは処方される薬の種類や量、個人の症状の度合いによるのであまり参考にはならないかも)
冒頭で述べたとおり私は専門家ではないし、症状や原因は個人で異なると思う。なのでしかるべきところに相談し診断を受けて欲しいのだけれど、もし心あたりのある方は、ヒスタミン不耐症の可能性を考えてみてもいいかも。
私はヴィーガンとしての生き方を続けたいし、それにともないプラントベースに移行した食事にも満足している。同じように、ヴィーガニズムに賛同する方々も応援したい。そもそも食事の変化がこの症状を引き起こした原因なのかも不確かなので、この記事を書くことで、心配を与えたいわけではない。とはいえ、私のように食品アレルギーがなく好き嫌いが少なく、基本的に健康である人でも、知らなかった不耐症を自分が持っていることが発覚する可能性があるのも事実。
今後も引き続き、可能な限り薬だけに頼らず、食生活で症状を改善していく方法をとっていきたいところ。もし何かいいアドバイスや、改善した経験がある方がいたら、info(at)thelittlewhim(dot)com までメールでか、インスタグラムの DM でおしえてください!
専門的知識をベースとした見解から、情報の誤りなどにお気づきでしたら、ご連絡ください。