ロンドンの独立系書店20選 前半(なので10選、プラス 1つのおまけ)

だいぶ時間が経ってしまったけれど、5月のこと。ロンドンに数日間滞在した。遠い昔とはいえ大学時代に留学していたし、幾度と訪れたことのある街なのだけれども、ひさかたぶり。


といっても、パートナーと私は、なんて言うのかな、地味な旅をするタイプかも。どこかの街をたずねた際に、もっとも時間を割くのは、書店(とレコード屋さんと古着屋さん)に足を運ぶこと。「はじめまして」ではない街だけれども、ロンドンには何度行っても楽しい書店が多い気がしていて、なおさら。

ということで今回は、私たちが5日間の滞在中に出向いた、ざっくりと判断して独立系と言える20の書店について。あくまで、地元民ではない訪問客としての目線からであり、限られた情報にはなるけれど、近々ロンドンに行く予定がある方もない方も、楽しんでもらえたらなにより。

どの書店もそれぞれ魅力的で、順位をつけたいわけではない。なので、アルファベット順にし、そして一度に20は読む方も書く方も疲れてしまうので、前半としてここでは10選 + 1つのおまけです。

ロンドンの独立系書店 前半の10選

Bookmarks Bookshop

ブックマークス・ブックショップ

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屋号がBで始まるゆえこの書店が1店舗目となったのは、なんだかとてもエキサイティング。というのもこちら、なかなかハードコアなソーシャリスト書店兼出版社。

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表に出ていた看板。ソーシャリスト、LGBT+、アンチレイシストの本ありまっせ、と。

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当たり前なのだけど、英語とはいえ、普段アメリカにいる私にとっては真新しく感じるイギリスのトピックが多く目につくので、とても新鮮。

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出版業も行っていたり、自主出版なのかな?と思われる書籍や zine もたくさん。本を編む人たちが集い、それを手にとってもらうことが社会活動になっている、静かで熱いエネルギーを感じる場所。

Bookmarks Bookshop
1 Bloomsbury Street, London WC1B 3QE
エリア: Bloomsbury
https://bookmarksbookshop.co.uk
@bookmarksthesocialistbookshop

Brick Lane Bookshop

ブリックレーン・ブックショップ

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私たちは今回、イースト・ロンドンの Shoreditch(ショーディッチ)というエリアに滞在していた。そこから歩いてすぐ行ける Brick Lane(ブリックレーン)に佇む、小さな書店。

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気取らない、町の書店といった規模と雰囲気が、このエリアの空気にぴったりだったな。話題の新刊を中心に、多様な本が小さな店内に詰まっていた。

Brick Lane Bookshop
166 Brick Ln, London E1 6RU
エリア: Shoreditch
https://bricklanebookshop.org
@bricklanebookshop

The Common Press

ザ・コモン・プレス

こちらも滞在先のすぐ近くで、歩いていたら見つけたので入ってみたお店。それが、興奮するほどに最高な場所だった!

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クィアでインターセクショナルな書店と言うだけあって、ジェンダー、性的指向、人種や民族におけるマイノリティの著作、エイブリズム、植民地主義や帝国主義、ポストコロニアルなフェミニズムに関する書籍などなど、がっつり。

その名の通り出版業も行なっているし、それ以外にも、扱っている本はインディでプログレッシブな出版社のものがたくさん。

椅子がたくさんあり、人が集える空間づくり。ワークショップやイベントも頻繁に開催し、多様な声の発信を応援する場所だそう。

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カフェスペースは夜はバーになり、書店なのに遅くまで営業している。

書店の本気度をはかるうえで個人的に指標にしていることがある。それは、子供や若年層向けの書籍のセレクションを見ること。撮った写真が驚くほどピンボケしていたので載せられないけれど、The Common Press の壁一面に広がる YA(ヤングアダルト)の本棚は、圧巻なほどに人種マイノリティを重視したセレクションだった。白人が表紙に描かれた本はほぼなかったほど。アメリカでもイギリスでも、それはおそらく見たことがない光景だったな。

The Common Press
118 Bethnal Grn Rd, London E2 6DG
エリア: Shoreditch
https://www.commonpress.co.uk
@thecommonpress_

Daunt Books

ドーント・ブックス

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ロンドンとその他の都市で複数店舗構えるこちら。特に Marylebone(メリルボーン)店は、ロンドンの書店といえば、な有名な存在かと。

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書店が好きな人なら、この角度の写真、見たことあるかも。私も、例にもれず、撮りました。

何度訪れても、ここは雰囲気があるなぁと思う。

ここで話がちょっと脇にそれるけれど、私が動きを見守っている、書店にまつわるある動向・・・Daunt Books の創業者 James Daunt は、2019年から、 Barnes & Noble(バーンズ・アンド・ノーブル)というアメリカの大型書店チェーンの CEO をつとめている。

え、独立系書店創業者が、なぜ?って感じなのだけれども、そこには書店や本の市場の動向の変化を知る必要がある。遡ること90年代、アメリカでは、Barnes & Noble が挑戦的な店舗拡大計画を展開し価格競争を激化させ、地域の家族経営や個人経営の独立系書店を潰したと言われている。アメリカには、大量入荷・低価格で客を呼び寄せる、紋切り型の Barnes & Noble 大型店が溢れることになった。

その当時の様子は、メグ・ライアンとトム・ハンクスの映画 You’ve Got Mail(邦題: ユー・ゴット・メール、1998年)を観たことがあったら、想像しやすいかも。ニューヨークのアップタウンで、母親が始めた児童書店を経営するケリーと、そのお店を廃業に追い込む、Barnes & Noble を彷彿とさせる大型書店チェーン企業に勤めるジョーの、ロマンティック・コメディ。

とはいえ、この映画の頃の書店市場はもはや過去のもの。市場を握る力は大型書店チェーンから Amazon に移り、長らく経つ。実店舗系の書店は、小型のみならず大型でも存続が厳しくなり、実際にアメリカでは、複数存在した大型書店チェーンビジネスは次々と倒産し消えていった。皮肉なことに、生き残りがかかっている Barnes & Noble は、独立系書店にとってかつては「敵」であったけれども、なんと今や、巨大オンラインビジネスに共に対抗する「仲間」だとする見方も。

関連記事: How Barnes & Noble Went From Villain to Hero (New York Times)

そこに、Daunt Books の James Daunt がなぜ登場するのか。Daunt 氏は金融界出身で、Barnes & Noble の前には、アメリカと似た状況にあったイギリスの大型書店チェーン Waterstones(ウォーターストーンズ)の取締役として危機から救った実績があるそうだ。そういえば、ロンドンで Waterstones に何店舗か出向いたけれど、紋切り型の大型書店チェーンというより、それぞれの店舗に個性を持たせる、どこかインデペンデント系を思わせるお店づくりだったかも。そういう戦略らしい… Daunt 氏は独立系書店の創業者なのだから。

関連記事: Barnes & Noble is Stealing the Indie Shop Playbook, and it’s Working (Fast Company)

イギリスの独立系書店で成功し、イギリスの大型書店チェーンの起死回生を図った Daunt 氏。彼による、今度はアメリカの大型書店チェーンの Barnes & Noble の、規模の小さい書店との共存も意識した建て直しは、どうなっていくのかな。

コミュニティの声を聞き、丁寧に本を選び販売する、小規模ながら実直な独立系書店のビジネスを、散々いじめてきた Barnes & Noble。それが、Amazon という太刀打ちできない巨大ないじめっ子が現れたことによって、独立系書店のやり方を再評価し取り入れようとする状況って、なんだかうまく消化できない。昨日の敵は今日の味方に、本当になり得るのかな。

てか、各店舗ごとのオーセンティックさって、そう簡単に「つくる」ことができるものなのかな。大型チェーンがそれを仕掛けている裏側には独立系書店の創業者がいるのって、なんかどう考えたらいいかわからなくなるな。独特の雰囲気を持つ Daunt Books に足を踏み入れたら、この一件に関するモヤモヤが止まらなくなってしまった。

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※ 一方で、特定のジャンルに強みを持っていたり、コミュニティを重視した独立系小型書店は今アメリカで増えている、という明るいニュースもある。

関連記事: Some Surprising Good News: Bookstores Are Booming and Becoming More Diverse (New York Times)

Daunt Books Marylebone
84 Marylebone High St, London W1U 4QW
エリア: Marylebone(国内に合計9店舗あり)
https://dauntbooks.co.uk/
@dauntbooks

Foyles

フォイルズ

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こちらもイギリス国内に複数店舗を構える、比較的規模の大きい独立系書店。店内はモダンな設計だけれども、110年以上の歴史を持つ。

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店内はすごく広いうえに、あれ… 結局何フロアあったのだろう、よくわからなくなってしまったけれど、地下も合わせて8階くらいあったように思う。

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というのも、ぐるぐる店内をまわるのがすごく楽しくなるようつくられているのが感じられて、階段を登り降りしながら、驚くほど幅広いジャンルの本、本、本!の世界が広がっていく感覚。

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階段。(大きなエレベーターもある。)

ロンドンでどこか一つだけ大きめな書店に行ってさまざまな書籍を見たい、という場合、ここかな。

Foyles Charing Cross Road
107 Charing Cross Rd, London WC2H
エリア: Soho(国内に合計6店舗あり)
https://www.foyles.co.uk/
@foylesforbooks

Gay’s the Word

ゲイズ・ザ・ワード

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名前から想像しやすいと思うけれど、ゲイのソーシャリストたちが1979年に集っていたコミュニティスペースから発展したのがこの書店。イギリス最古のLGBT書店、とのこと。

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混んでいたので店内全体の写真はないのだけど、決して広いわけではない空間には、ジャンル分けされたそれぞれの棚にたくさんのLGBTQ+関連の本が並んでいた。文芸もあれば、政治や哲学の書籍も豊富。時間がなかったうえに混んでいたしで、ゆっくり見れなかったのが悔やまれる。

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お店からすぐの横断歩道。

Gay’s the Word
66 Marchmont Street, London WC1N 1AB
エリア: Bloomsbury
https://www.gaystheword.co.uk/
@gaysthewordbookshop

The Gilded Acorn

ザ・ギルデッド・エイコーン

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ここは、特筆したいポイントがあるわけではないのだけれど、個人的なアタッチメントから選んだ。この小さなお店は、私が大学時代に留学していた経済学と政治科学の大学、LSE (London School of Economics and Political Science) の敷地内にあるのだ。

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正直、在籍していた頃は気に留めてなかったけれども…。教科書を販売するのではなく、文芸中心の新しい本と古本を揃えた、こじんまりとしつつかわいい空間だった。このすぐ近くの大学図書館にばかり通っていた記憶とともに。

The Gilded Acorn
1 Portsmouth St, London WC2A 2ES
エリア: Holborn
@thegildedacornbookshop

Gosh! Comics

ゴッシュ!コミックス

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コミックス、グラフィックノベル、マンガ、イラスト集などの専門店。

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オタクな空間なのに、日光の入る明るい店内なのが新鮮。

私が住む北ブルックリンの一角にも、グラフィックノベルに特化した独立系書店があって大好きなのだけれど、ここはそこより広く、セレクションも濃厚だった。

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作家を呼んだイベントもよく開催されているようで、このお店が近くにある人たちがうらやましい。

Gosh! Comics
1 Berwick St, London W1F 0DR
エリア: Soho
https://goshlondon.com/
@goshcomics

Henry Pordes Books

ヘンリー・ポーズ・ブックス

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Charing Cross(チャリング・クロス)と Covent Garden(コヴェント・ガーデン)の間くらいの位置にある、小さな古書店。50年以上営んでいるとか。

私はあまり詳しくないのでよくわからないけれど、初版などの貴重な書籍もたくさん取り扱っていることで有名なよう。

Henry Pordes Books
72 Charing Cross Rd, London WC2H 0BB
エリア: Charing Cross
https://www.henrypordesbooks.com/
@henry_pordes_books

Judd Books

ジャッド・ブックス

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緑色のひさしと丸っこいフォントが目を引いたこちら。

新しい本もあるのだけれど、圧巻なのは古本の数!25年以上続く、地元に愛される古本屋さんだそう。こういうお店が自分の街に一つはあるとうれしいよなぁって、古本の匂いに包まれながら思った。

Judd Books
82 Marchmont St, London WC1N 1AG
エリア: Broomsbury
https://juddbooks.com/wp/
@juddbooks

おまけ

Tate Bookshop at Tate Modern

テート・モダン・ブックショップ

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ロンドンとリバプールに美術館を持つ Tate。テムズ川沿いにどーんと構える Tate Modern 内ギフトショップの書店が楽しかった。

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展示があった Guerrilla Girls(ゲリラ・ガールズ)の書籍やグッズも。

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Tate Moden はかなり大きい施設で、見たいもの全部見よう!と欲張ると、あっという間に数時間経ってしまう。書店にも興味のある方は、閉館時間を意識することをお忘れなく(誰かさんみたいに大慌てにならないように…)。

Tate Bookshop at Tate Modern
Bankside, London SE1 9TG
エリア: Bankside
https://www.tate.org.uk/visit/tate-modern/turbine-hall-shop
@tate

これで10選!5日間でこの2倍の数(実際にはそれ以上)の書店に訪れたと思うと、あらためてしみじみ、私たちはどれだけ書店が好きなんだ、と。

アルファベット順で後半に先送りになった書店たち… 学生時代、苗字にあてがわれた出席番号が必ず後ろの数人になっていた私は、自分のことのように残りの10店を思う(大げさ)。後半も楽しみにしていただけたら、地味旅好きとしてはうれしい限りです。

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