THE LITTLE WHIM では、アニマルライツや環境、人権への関心が高まるにつれて、ヴィーガンライフスタイルへの意識はどんどん強まってくると考えている。
少しでもヴィーガニズムについて学び、身近に感じ、できることから始め、続ける – そのきっかけを求めて始まった連載、「世界のヴィーガンにインタビュー」。企画の詳細については以下のリンクから。
第4回目はアメリカ カリフォルニア州 ロサンゼルス在住 Natsukoさん。
Natsukoさんのプロフィール
ロンドンやニューヨークを経て
現在は夫と双子のお子様たちとロサンゼルスで生活。
彼女はヴィーガニズムだけでなく
ゼロウェイスト(ゴミを出さない)という視点からも
環境に配慮したライフスタイルに取り組んでいる。
多くの情報やアイデアをウェブサイトやインスタグラムで発信中。
非常に高いスタンダードを持っている印象だけれど、インタビューでは始めようと考えている方や始めたばかりなど様々な段階にいる方に向けたメッセージも送ってくれている。
1. いつからヴィーガンになりましたか?そして理由は?
2017年11月からです。わが家の入り口は自分たちの健康のためでした。
”Forks over Knives”というドキュメンタリー映画を夫婦で鑑賞し、特に強い影響を受けた夫の意志が私の考え方にも変化をもたらしました。そしてヴィーガンというより、動物性食品を避ける上に加工されていない食材丸ごとそのままのものを調理して食べる、ホールフードプラントベースという食生活を始めました。
その後に観た”What the Health?” と合わせて、この2つのドキュメンタリーは動物性の食品と病気の関係について考えさせられる内容です。
ちょうど出産をし、親の健康が子どもたちの人生に与える影響について考えるタイミングであったことも、食生活を変える後押しをしたと思います。
そしてホールフードプラントベースの食生活を通して、 私たち夫婦の価値観がヴィーガンだと気づきました。
元々ゼロウェイストを進めていた私たちにとって、畜産と環境汚染の深い関係を知ったことも大きかったです。自分たちが何気なく続けていた習慣がどこに繋がっているのかを知ることができ、今では食事だけに限らず生活における全ての面でヴィーガンな選択をすることにしています。
※ THE LITTLE WHIM追記
“Forks over Knives” と “What the Health?” は、アメリカではNetflixで視聴可能です。
2. どのように移行しましたか?
私はヴィーガンになる前から10年以上ベジタリアンでした。夫は外食の時はお肉や魚も食べていましたが、家では私に合わせてベジタリアン。なので、夫婦の食事をヴィーガンにするのは思ったより大変ではありませんでした。
それでも数ヶ月は、誘惑に負けて外出時にヴィーガンではないスイーツを食べてしまったことも。すぐに100%移行するのはかなり難しいし珍しいですよね。
子どもたちの食事に関しては、数ヶ月かけて入念にリサーチを重ね夫婦ともに納得した上でヴィーガンに移行しました。心身、脳ともにこれから大事な成長過程のある子どもに関しては、慎重過ぎるくらいでちょうどよかったですし、だからこそ今はもう不安はありません。
ファッションやビューティに関してもヴィーガニズムを見直し、例えば洋服ではレザー、ウール、ダウンなどは、思い出の詰まったものだけを残してあとは全てシェルターやチャリティショップに寄付しました。今ではヴィーガン、ゼロウエイスト、エシカルな視点から購入するものを吟味しています。
3. ヴィーガンになるにあたって、難しさはありましたか?
気持ちの面ではそこまで苦労しなかったのですが、日頃買っていた食品一つ一つのラベルを見てヴィーガンかどうかを確認して、違った場合は別のものを探して・・・というプロセスが始めの頃は面倒でした。ヴィーガン オプションがあるレストランを探すというのも同じです。でも一度この過程を終えてしまえば、日常的に難しいと思うことはなくなりました。
ちょうどヴィーガンになる少し前にゼロウェイスト生活も始めていて、身の回りのものも同じように見直していたところでした。こちらもヴィーガン、クルエルティフリーな製品を探したり手間は掛かりましたが、それまで知らなかった世界を知ることができて得した気分でした。
4. 周りの反応はどうでしたか?
都市部に住んでいる友人たちは、多様性に慣れっこなのですんなりと受け入れてくれたと思います。どのレベルまで理解してくれているのかはわかりませんが、少なくとも反対意見などは一言も聞きませんでした。
しかし、夫の出身であるペンシルベニア州の比較的小さな地方都市に行くと状況は違いました。義両親は私たちの選択を尊重しサポートしてくれています。ただ、一部の友人や親戚からは笑われたり煙たがれたりしたこともあります。知らない人に言われたところで全く気にならないことも、大事な人から言われるとやっぱり悲しいですね。でも自分たちの選択に迷いはなかったしこんな反応も想定内だったので、ネガティブな意見は聞き流しておきました(笑)。
ヴィーガンになって日本に帰ったことがまだないのですが、日本での反応は後者に近いのかなと想像しています。いい意味で裏切られたいですけどね。
5. ロサンゼルスのヴィーガン事情をおしえてください。
ヴィーガンになった時はニューヨークに、今はロサンゼルスに住んでいるのですが、どちらの都市もヴィーガンには住みやすい街です。スーパーマーケットでの買い物も外食時にも選択肢がかなりあります。ヴィーガンの友人がいるわけではないのですが、みんなヴィーガンメニューに興味を持ってくれて一緒に食事にも行きます。
ロサンゼルスでは毎週のようにヴィーガンフェスが開催され、この街に住むセレブリティにもヴィーガンの人がたくさんいて、そうでない人にとってもヴィーガニズムとの距離が近いのでは。
子どもたちのプレスクールも全員にベジタリアンのおやつを提供していて、わが子たち以外にもヴィーガンキッズが数人います。ヴィーガンでいることが何も特別なことだと感じなくていい環境は、とても恵まれいると思います。
6. 健康上や生活上、ヴィーガンを続ける中で特に気にかけていることはありますか?
健康面では「できるだけ加工品を食べないこと」。これはホールフードプラントベースの食生活の考えからです。そして遺伝子組換え品を避け、オーガニック素材を選ぶようにしています。こういうことを実践しやすいのは、アメリカに住んでいてよかったと思うところです。
生活面では2つあります。1つ目は「なぜヴィーガン ライフスタイルを選んだのか忘れないこと」。何ごとも、自分で調べて納得したことじゃないと続かないですよね。20代までは人並みに誰かの意見やトレンドに左右されてきたので、経験から実証済みです(笑)。今はヴィーガンである理由がはっきりしているので、誘惑に負けることなく2年間続けられています。
2つ目は「自分を責めないこと」。長年の習慣を変えるには、簡単に全てを完璧にできるはずはないと思うんです。新しく買ってみたものにハチミツが入っていた!といった小さな失敗は今でもたまにあります。うまくできないことを考えるよりも、できたことやこれから挑戦したいことを考えるようにしています。
7. ヴィーガニズムに関心がある方やこれからヴィーガンになろうと考えている方に、アドバイスをお願いします。
人と比べることなく自分らしいヴィーガン ライフスタイルを進めていって欲しいです。例えばヴィーガン歴3年目の人と、これから始めてみようかなという自分を比べる必要はないですよね。知識の量、周りとの関係性、そして自分にとって心地いいヴィーガンライフスタイルを築くのには時間が掛かるものです。焦らず、目の前にある新しい体験を一つずつ楽しんでください。
それと、日本ではまだヴィーガンは本当に少数派だと思いますが、インターネットやソーシャルメディアなどでヴィーガン ライフスタイルを発信している人たちがたくさんいます。COOKIEHEADさんのように海外からのインフォメーションを日本語でわかりやすく説明してくださっている方などもいますので、波長の合いそうな人を見つけて情報を集めるのもおすすめです。私もインスタグラムやウェブサイトでの交流は大歓迎なので、気軽に話しかけてください。
8. そのほか、メッセージやコメントがあればどうぞ。
ヴィーガニズムの考えを取り入れるということは、ただ食事や身の回りのものを変えることだけではないと思っています。大多数の人と違うことをするのは勇気がいることですが、自分の想いに向き合って自分らしさを手に入れるひとつの手段のような気がします。
ヴィーガン ライフスタイルが私にもたらしてくれたのは、より自分らしくいられる楽しい世界でした。心も身の回りもずっとシンプルになりました。優しさで溢れるヴィーガン ライフを楽しむ人が、これからもっと増えるといいなと心から思います。
写真提供: Natsuko
編集後記
彼女のインスタグラムやウェブサイトから伝わってくる印象は、なんの苦労もなくまるで簡単なことかのようにヴィーガンでゼロウェイストなライフスタイルを送っている完璧なパーソナリティ!だった。私にはとうていマネできないと感じていた。
しかしインタビューからわかるのは、彼女も、誰もが経験する混乱を伴うフェーズや失敗を繰り返した上で自分に合ったスタイルやバランスを見つけたということ。そして、「目の前にある新しい体験を一つずつ楽しむ」ことで、今の状態にたどり着いたということ。これって、新しいことに挑戦する上で余計なプレッシャーや恐怖心をなくすために忘れてはいけないことだよね。
誰も完璧じゃない、でも完璧に近い状態や理想を求めるその気持ちが何より大切。その自分らしいゴールを目指す上で、Natsukoさんのようなロールモデルとなる存在を見つけるのもいいかもしれない。
Natsuko Matsuyama
http://natsukomatsuyama.com/
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