前回の日本語小説編に引き続き、第2弾は COOKIEHEAD が好きな本 英語編。
私は100%英語の環境でネイティブレベルとして仕事をできる英語力があるけれど、実のところリーディングが一番苦手な分野。新聞記事や仕事の書類・Eメールは問題ない一方で、小説となると読解力が低いと感じる。分厚い難しい本は避けがち。
なので、今回紹介する本は英語だけれど、英語がある程度のレベル(一般的な文芸書が読める)であればスムースに読むことができるもの。日本語に訳されている場合もあるので、日本語で読んでから英語版に挑戦するというのも、英語の上達を目指している人にはオススメ!
私の独断と偏見で英語レベルも記しています。
まずは私が約6年前にニューヨークに引っ越してきて一番初めに読んだ英語の小説、Patti Smith の “Just Kids”(日本語訳 : パティ・スミス、「ジャスト・キッズ」)。1970年代を象徴するミュージシャンであり詩人であるパティ・スミスがニューヨークに引っ越してからの20年を綴った回想録的自叙伝。
貧しかった下積み時代を一緒に過ごした恋人、写真家のロバート・メイプルソープとの独特な固い絆が描かれており、何度も目頭と胸が熱くなる場面が。シンプルに通じ合っているのに、アーティスト同士で複雑にぶつかり合う感じがとても自然に綴られていて、そしてそれが切ない。
ジャニス・ジョップリン、ジミ・ヘンドリックス、アンディ・ウォーホル、サルバドール・ダリ、サム・シェパード、ジム・キャロルなどとの当時の交流もすごく興味深い。
ニューヨークで新生活を始めたばかりだった頃を思い出させる一冊。
英語レベル: ★★☆☆☆
Miranda July の “No One Belongs Here More Than You”(日本語訳 : ミランダ・ジュライ、「いちばんここに似合う人」)はかなり変わった作品。パフォーマンス・アーティスト、映画女優、作家などなど多くの肩書きを持ち、最近はユニクロとコラボレーションもしたミランダ・ジュライの短編集。鮮やかな景色が目に浮かぶような文体で、やや不可解な物語が展開される。
恋愛と性について、彼女の独特な見解で進むストーリーが満載。これは共感を求めて読む本ではなく、むしろ新しい発見が欲しい人向け。不思議なエピソードの数々を経て読後に感じるのは、人の感情と体や性に関することは真に人それぞれであるということ。更には相手があってこその感情や行為もそれぞれが脳の中で思考を処理しながら個別の何かが進んでいて、でもそれをさみしいことではなく自然なことだと感じさせられるのがおもしろい。
日本語訳は読んだことがないけれど、ミランダ・ジュライの個性を楽しむには少し複雑ですがぜひ原書をオススメします。
英語レベル: ★★★★☆
これは読むのがすごく難しかった!Milan Kundera の “The Unbearable Lightness of Being”(日本語訳 : ミラン・クンデラ、「存在の耐えられない軽さ」)は、フランス国籍を持つチェコスロバキアの作家による、1968年のプラハの春(ソビエト軍によるチェコスロバキア侵攻)が軸になっている恋愛小説。
深い意味を感じさせるタイトルの通り、これは生きる上での「重さ」と「軽さ」についてやや哲学的にしかしあくまで小説として綴られている。主人公の「軽い」男性と、それを取り巻く「重い」時代背景や人間関係。クンデラは、重いものは恐ろしく、軽いものは美しいのか?と疑問を投げかける。その一方で、重いものは大地に近くなり現実的で真実になり、軽いものは飛び立っていき自由になり、そして意味を失うとも書いている。
短くまとめることができない本なのだけど、恋愛小説としても哲学的読みものとしても、人生に溢れている選択肢の一つとして「重さ」と「軽さ」について考えさせられる一冊。難解ではあるので、自信がない方は日本語訳を先に読むか、映画化もされているのでそれを観てから読むといいかも。原書はフランス語なのでフランス語を読める人はぜひ原書で。
英語レベル: ★★★★★
これは夫に薦められた、William Carols Williams(ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ)の詩集。
私がこの詩集を気に入ったのはシンプルさにあった。ぱらぱらとページをめくり、目に留まった詩をいくつか読むのが好き。自然や生活の中に気づくことを短く綴った言葉の並びは、まさに詩の醍醐味。
更には、この作家の有名な作品に長編詩の “Paterson”(「パターソン」)というのがあり、ジム・ジャームッシュにより映画化もされている。
人気海外ドラマの 「GIRLS/ガールズ」のアダム役やスターウォーズのカイロ・レン役で知られるアダム・ドライバーが主演。
詩を映像化しウィリアムズの美しい世界観が展開されているので、映画もすごくオススメ。
英語レベル: ★★☆☆☆
これは美術史が一冊にまとめられたもので、どうやら日本語には訳されていないみたい。
E.H. Gombrich の “The Story of Art” は、日本の芸大出身でパリでアーティストとして活躍する友人におしえてもらったもの。美術史の基本中の基本的な概要を、最も偏見なくかつわかりやすく解説してくれる本として紹介してくれた。
写真などの参考資料も満載で、大学の美術史で触れた内容がぎゅぎゅっと詰まっている。汎用的でありつつコンパクトな美術書として、大きな美術館に行く前や行った後にこれで予習・復習ができるのですごく役に立っている。
英語レベル: ★★★☆☆
最後はコミック(厳密には英語で graphic novel)から。
日系アメリカ人作家である Adrian Tomine(エイドリアン・トミネ)の “Shortcomings” は、カリフォルニアの日系アメリカ人同士のカップルが主人公、そして韓国系アメリカ人のレズビアンの友人も加わる。それぞれがアジア系としての社会的考えやコンプレックスを持つが、それをどう対処するかが異なり、結果として生じていくズレが描かれている。私は「日系アメリカ人」ではなく「アメリカに住む日本人」であり、更に夫は白人アメリカ人なので立場的には重ならないけれど、登場人物たちが感じる気持ちはどれも理解ができる。
日本人や日系人としてアメリカに住んでいる人には少し胸が痛くなる切ない物語だと思う。そうでない人にとっても、理解・共感・共有し合っていると思っていた恋人や友人との関係にいつの間にか生じるすれ違いにはチクリとしちゃうかも。
“Shortcomings” は残念ながら英語のみだけれど、エイドリアン・トミネの作品はいくつか日本語訳もされている。私は彼の作品は好きなものばかり!アメリカの浅野いにお的存在。イラストも好きなので、夫が昨年のクリスマスにプレゼントしてくれたサイン入りのプリントを壁に飾っているよ。
英語レベル: ★★★☆☆
英語がそこまで難しくなく、日本語訳もされているものを中心にまとめました。みなさまのオススメも、お問い合わせやソーシャルメディアからおしえてくださいね。
次回はアート系の予定です。