先日の「いろいろ悩む・・・私がリストアップしているサステナブルな下着ブランド」を読んでくださった方々の中から、生理用品に関する質問をいただいた。なので、今回は私がここのところ主として使っている生理用品、月経カップについて。
・・・月経カップ、なんと露骨な名前。英語でも、タンポンは tampon、ナプキンは pad なのに、月経カップは同じで文字通り menstrual cup。
恥ずかしさを含めて曖昧に書いても意味がないかなと思うので、その名前に引けをとらない、それなりに露骨な話になる確信があるのを、あらかじめお知らせしておきます(画像は出てきません)。
この記事はあくまで個人の経験をベースにした感想です。月経カップの、身体へのネガティブな影響を指摘する意見もあります。非常にパーソナルなものなので、ご自身でのリサーチを重視してください。
どうして月経カップ?
私は10代の頃からタンポン愛用者。就寝時、あとは1日家にいる日のみナプキンを選んできた。月経カップに切り替える直前は、オーガニックコットンのタンポンを主に使っていた。個包装とアプリケーターは紙製。とはいえゴミは、量で言えば一般的(オーガニックではなく、そしてプラスチック製)のものと変わらないだけ出ていた。使用済みタンポンはリサイクルできるわけではないから。
そんな中、2018年の終わりごろ、繰り返し使える生理用品への移行を考えた。よく見かけるのは月経カップ、月経用吸水ショーツ、布ナプキン。一般的に言われている、従来の使い捨てと比較した際のこれらの利点としては・・・
- 生理用品を買い続けることからの解放
- 長時間着用可能
- トキシックショック症候群(TSS)の低可能性
- ゴミ削減
- 長い目で見たら経済的
※TSSについて詳しくはこちら(一般社団法人 日本衛生材料工業連合会)
私も同様の理由から、乗り換えを前向きに感じていた。
タンポンを使ってきた私には、月経カップが最も理にかなっているように見えた。ナプキンをあまり使わない人にとっては、(未経験なので想像だけれど)月経用吸水ショーツや布ナプキンの、いくら吸収性が高くてもある程度はあるであろう「湿度が肌に伝わる」感覚を敬遠する場合はあるんじゃないかな。私はそうだった。
あとは、吸水ショーツや布ナプキンは洗濯し乾くのを待たなくてはいけない。ということは、(最終的には)複数買い。私にはそれがシャクだった。長い目で見たら経済的とはいえ、初期投資が結構あるじゃん!吸水ショーツや布ナプキンの価格設定に物申したいわけではない。ただ、月経のために、必需品ってだけで特別欲しいわけでもないものに、まとまったお金を払うっていう事実が個人的にシャクだった。
シリコンでできた月経カップはその点、洗浄後すぐまた使える。とりあえず1つあれば事足りる点に惹かれた。気に入って、必要を感じたら買い足せばいい。
さーて、月経カップ、月経カップ… どれがいいのかな?アメリカにはものすごい数のブランド・種類がある。レビュー記事や動画もその数だけ豊富になる。
とはいえ、これは個々が体の中に入れる、とてつもなくパーソナルなもの。おまけにそもそも自分の体の中がどうかって、知らなかったり、知っているつもりでも熟知しているわけじゃない可能性は高い。
とりあえず、と始めたインターネットでのリサーチはどんどん沼にハマった。その間に月経を数回迎え、タイミングを逃し続けた。
私が選んだのは Saalt Cup
そんな中出会った、Saalt というブランドのもの。正直に言うと、生理用品らしからぬスタイリッシュなブランディングに目が留まったのがきっかけ。最近だとこんな感じ。
そこからじっくり見てみたら、インスタグラムの投稿やストーリーズ、あとは YouTube などで、選び方や使い方、アドバイスが多いだけでなく細かかったので、イメトレがしやすかった。購入後のカスタマーサービスの評価が高かったのもポイント。最近は取り扱いが増えていて、Target、Whole Foods Market、Anthropologie、Urban Outfitters、Revolve などでも買えるよう。
Saalt Cup の特徴
- 医療グレードのシリコン製
- BPA不配合
- ラテックス不配合
- アメリカFDA(食品医薬品局)登録済み & 準拠に沿う
- ヴィーガン & クルエルティフリー
- サイズ展開: Teen(65mm/37.7mm)/Small (70mm/41mm)/Regular(70mm/46mm) ※全体の長さ/上部の直径
- 硬さ展開: Regular/Soft
- 最大12時間継続着用可能
- (適切な利用をすれば)最大10年使用可能
- アメリカ製
- Bコーポレーション認定
- 生理用品普及が不充分な国に自社製品を寄付(2019年: 4,500個)
- 生理・妊娠に関する教育
参考:
“Abou Saalt“
“2019 Impact Report“
Saalt のサイトにある “Which Cup is Right for Me?” という自分に合うものを探すクイズ形式のサポートを使ったり、ほかのさまざまな情報を参考に、私が選んだのは Saalt Regular の Small サイズ。
Regular というのはシリコンの硬さのこと。今は Soft も発売していて(私が買った当時はなかった)、体に優しそうだけれど、注意も必要みたい。膣が敏感だったり膀胱に刺激を感じやすい方にオススメの一方、初心者には柔らかいゆえに体内でうまく開かずフィットさせるのが難解になる可能性があるそう。(月経カップを使ったことある方はわかると思う、ある程度の硬さと弾力の大切さ!)あとは、運動量によっても硬さの選択を考慮したいところ。
Small はサイズだけれど、厳密には上部の直径のこと。Small は41mmで、もう一つのサイズ Regular の46mmに比べ小さく細身。長さは同じだが、ホールドできる経血の量が Small は25ml(タンポン約3個分)、Regular は30ml(タンポン約4個分)だとか。それぞれの膣の形状、子宮頸部の位置、経血量、そして出産経験の有無もサイズ選びには関係する。
↑ 赤が Small、グレーが Regular
着用に慣れるまで
最初に言っておくと、私の場合は慣れるまでは簡単でなく、今でも気分が乗らないと使わない月や日がある。特に使い始めは、戸惑いと緊張と不安と恐怖と焦りとフラストレーションがそれなりにともなったので、自分の気持ちを優先した。しかし一度コツを掴むと、それらが吹っ飛んだようになる。感覚としては、自転車の練習みたい。「できるわけないー!」「もうやめるー!」って思っていたのが、突然スイスイ乗れるようになるような。
私が Saalt Cup を手にした時は月経中ではなかった。YouTube で観た動画の中には、月経ではない時に装着を試してみるといいと言う声がいくつかある。確かに、いきなり本番より安心して練習できるかもと思い、煮沸洗浄をした後にやってみることに。それが、今思うと(少なくとも私には)間違いだった気がする。
やはり、経血があるのとないのとでは、感覚が違う。カップを水で濡らして試みたけれど、痛かった。初めてで角度や挿入に問題があったのか、力を入れてしまった。取りはずす際に特に混乱して15分くらいかかってしまい、経血も何もない分動かしにくく、部位に数時間痛みが残った。
月経がやってきて、いざ本番・・・使ってみた。うまくいったかな?と感じる時と、着用に明らかに違和感があり数時間ではずす時があった。ナプキンと併用していたし、外出時は予備のタンポンが欠かせない月が続いた。
私の場合は特に、いつまでも手こずっていたのは装着より取りはずしの方。これは、回数を重ねて感覚を掴むのと同時に、あとで出てくるコツ1から克服した。
最大のメリットは長時間着用可能なこと
まだ自転車を完全に乗りこなせてはいない、いわば補助輪付きの状態で、どうしても月経カップを最大限に活用したいイベントが私にはあった。
当時ファッションブランドのホールセールチームでジュニアマネジャーだった私にとって、年に合計8回、パリとニューヨークでのセリング(展示会)は、来たるシーズンのビジネスを決める大事な仕事。期間は一週間ほどで、毎日のように朝から晩までさまざまなクライアントのアポイントメントをこなす。
1つのアポイントメントが数時間に及ぶファッションのセリングは、立ってる時間が長い。ショウルーム内で、見せたいサンプルを求めて飛び回る。一つ終わっても次が入っていて、スケジュールによっては休憩する間もないことも。そして、私ひとりで対応するかアシスタントがつくかや、クライアントのキャラクターにもよるけれど、アポイントメントを中断しお手洗いに行くことが難しい場面も出てくる。
私は月経周期をコントロールしていないので、年8回あるセリングの時期に月経が重なることはしばしばあった。生理用品の取り替えができない焦りと不愉快さ、そして集中できないフラストレーションから解放されたいと、ずっと思っていた。
オン & オフな感じで数ヶ月練習し、パリで迎えたセリングで、月経カップにチャレンジ。うまく装着できた日は、本当に快適だった。”Bonjour.” とショウルームにクロワッサン片手に出社した朝から、長い一日を終え “Au revoir.” と去るまで、まるで自分が月経中であることを気にしなくてよかった。
ラッキーなことに、私の働いていたブランドのショウルームは、パリもニューヨークもお手洗いが洗面台付きのゆったりした個室。なので一日働いて、その後クライアントや同僚たちとディナーの予定がある場合は、お手洗いで一度月経カップを空にし、洗浄して、装着し直すことができた。(逆に言うと、外出時や学校・職場など、洗面台が個別にないお手洗いでは困ることがある。)
数ヶ月経過してもまだ完全に慣れたとは言えなかったけれど、長時間着用できて大事な仕事中に取り換える必要がない快適さを痛感して、月経カップありがとう!と心から思った。
コツ1: とにかくリラックスする
今でこそ思うけれど、慣れるまでの間で(そしてそれ以降も)何より重要なのは、とにかくリラックスすること。私が最初の頃持っていた感覚、戸惑いと緊張と不安と恐怖と焦りとフラストレーションは、どれも悪く作用する。
装着と取り外し、どちらにおいても、ひと呼吸し、体全体(膣を含む)の力を抜く。これ、ほんと大事。うまくいかなかったら、一回中断して違うことをし、緊張がほぐれた数分〜数十分後に再チャレンジする。
リラックスって、なんてふわふわしたアドバイスなんだと思うかもしれないけれど、お願いだから信じて欲しい。使ってみたら、わかるはず!
コツ2: 自分に合うたたみ方を知る
月経カップになじみがないと、「え!?こんな大きいもの、どうやって入れるの?」と感じるかもしれない。しかし実際には、これをそのまま挿入するわけではない。折りたたんで入れて、体内で「ぽん!」と開かせ、それが膣の内壁とフィットして留まり、子宮頸部から流れてくる経血をホールドしてくれるのだ。Saalt のウェブサイトには、図解入りのインストラクション(英語)がある。
たたみ方にはいろいろ種類がある。私が参考にしたのはこの動画。ほかにも、YouTubeには似たような内容がたくさんある。
各個人の膣の形状や角度、子宮頸部の位置、使用する月経カップの形状や硬さによって、適するたたみ方は変わってくるそうだ。気長にいくつか試してみて、自分に合うたたみ方を見つけていくといいのでは。ここがうまくいくようになると、装着においてはだいぶ気が楽になる。
コツ3: 気乗りしない時は使わない
私の場合は、補助輪を完全に卒業し、スイスイ乗りこなせるようになったのは4ヶ月目だった。補助輪があった方が安心ならばそれでいいし、気分ではない時は使い捨てのものを使えばいいと思う。自分の気持ちを優先したい。
吸水ショーツや布ナプキンでもそうだけれど、ものすごく前向きなレビュー見ることがある。「こんなに快適だなんて!」「月経が来るのが楽しみ!」なんて声も。私は、個人的にそこまでは思っていない。総じてポジティブに思っているけれど、月経が楽しみとはとてもじゃないけど言えないかな。
月経期間特有のイライラしたり気分が落ちる感じがある時は、その時々に直感的に使いたい方法をとる。今でも使い捨て生理用品は購入し常備している。ゴミはがぐんと減ったけれど、出る。それは仕方がないと思っている。
生理用品がらみ環境負荷の
スティグマについて思うこと
最近はいろんな繰り返し使える、つまりは使い捨てでない生理用品がどんどん誕生していて、インスタグラムなどでも「サステナブルだから」として登場する機会がぐっと増えた。
使い捨て生理用品を使う女性の月経関連のゴミは生涯で1人あたり xxx キロになる、なんて記事を目にする。二酸化炭素排出量も書かれていたり。生理用品を使わない人からは出ない環境負荷… だけどそれが、生理用品が必需品である私たちのスティグマになるのって、フェアじゃなくない?
月経カップ、吸水ショーツ、布ナプキンの、「サステナブルだから」という流れを、プレッシャーに感じてる方がいるのではないかな(なので、リクエストをいただくまでこのトピックについて書いてこなかった)。
ただでさえ、月経ってウザい(と感じてる方が多いはず)。経血が煩わしいだけでなく、体調や精神状態が優れなくなる方もいる。買い足し不要・長時間着用可能や TSS などの側面で惹かれているならいいけれど、現状安定している・安心している生理用品を使い続けたいのならば、環境負荷削減だけを理由に強要はしたくない。あくまでこれはとてもパーソナルな選択であり、不安や気乗りしない要素があるなら、無理に重荷を足すことはない。(多くの人が取り入れやすい)マイボトルやエコバッグとは違う。
ふと思い出した。私は布おむつで育って、紙おむつで育った兄よりおむつが取れるのが早かったらしい。(両親が住んでいたイギリスで生まれ幼少期を過ごした兄は紙おむつで、母が一時帰国した日本で生まれた私は、「赤ちゃんにはこっちの方が優しい」と言う実家の祖母の意見から布おむつにしたそうだ。イギリスに戻っても、母はそのまま私には布おむつを継続したらしい。環境負荷削減が理由ではない。)
私のおむつが早く取れた理由は定かではないとはいえ、母は冗談まじりで、「布おむつが気持ち悪くて、早かったのかもしれないわね」と言っていた。幼い私、気持ち悪かったならかわいそうだけど、結果ゴミは出ず、そして早く取れたなら何より。おむつの種類は違えど、兄と私どちらも、大事に育てられた。
赤ちゃんはおむつを使うもの。「サステナブルだから」と布おむつを使う方も多いかもしれないが、もし使い勝手や利便性、もしくは健康上の理由などから使い捨てを選んでいたとしても、その環境負荷が、育てる人と赤ちゃんにとってスティグマになる必要はない。
生理用品も同じように思う。そして、繰り返し使うタイプより使い捨てを選ぶ方たちのために、手が届きやすい、安全・安心で、ゴミ・排出に配慮された商品や対策がもっと増えるべきって話。「サステナブルな」生理用品を選ぶ人たちがエラいわけでも、そうでない人が環境に優しくないわけでもない。月経に関するものは必需品な上にすごくパーソナルなんだから、個人で環境負荷を抑えられるオプションだからといって、プレッシャーは感じないで欲しい、ってことを私はここで言っておきたい。
最後に
結論としては、私は月経カップに満足している。それなりに時間がかかったけれど、10代の頃からずっと使ってきた慣れ親しんだ生理用品から変えたのだから、それも当然かな、と思う。
本音を書いているので、もし月経カップに強く興味を持っている方がいたら、少しでも何か伝わったら嬉しい。そしてあくまでパーソナルなものなので、繰り返しになるけれど自分の気持ちを優先し、あとは使用する際は何よりリラックスすることを忘れないでください!