クルエルティーフリーについて知ってもらいたい4つのこと

BEAUTY

 

私は2018年の秋頃から、クルエルティーフリーの化粧品のみを使うようになった。それ以前から動物実験への疑問はあり、迷ったらクルエルティーフリーのものを選ぶようにしていたけれど、100%になる決意をしたのは半年と少し前のこと。

 

 

それ以降、THE LITTLE WHIM で取り上げる化粧品は全てクルエルティーフリーのものに限定している。この半年間、私自身クルエルティーフリーについてだいぶ理解を深めたし、色んなことを知れば知るほど、もっと多くの人にも知って欲しいと思うようになった

 

今回は、クルエルティーフリー 101 としてクルエルティーフリーって何!?という基本的なことから、もっと深い部分まで説明していこうと思う。どうして動物実験が今も続けられているかや、クルエルティーフリーの会社・ブランドを見極める上での落とし穴など、まさに私がこの半年間向き合ってきたこともまとめる。

 

クルエルティーフリーとは?

 

クルエルティーフリーという言葉は、文字通りだと「残虐性 (cruelty) がない (free)」という意味。

具体的には、オックスフォード辞書によると:

 

(of cosmetics or other commercial products) manufactured or developed by methods that do not involve experimentation on animals.

(化粧品や消費財において)製造や開発の過程で動物実験を必要とする手段がとられていないもの

※THE LITTLE WHIM 訳

 

原料や製品の安全性や有効性を確認するため、動物実験は化粧品のみならず様々な分野で行われている。医薬品は大きな例だ。ただ、化粧品・消費財と医薬品は大きく異なる分野であり、化粧品・消費財における動物実験は全く必要ないと訴える意見は今世界中で増えている。

動物実験にはウサギ、ラットやネズミがよく使われる。その中でも、化粧品のクルエルティーフリーのシンボルとしてウサギをよく目にするので調べてみた時、ウサギが化粧品の動物実験によく使われるいくつかの理由の一つとしてウサギは(痛みに対して)おとなしいからだという記述を見つけた。それを読んだ時、私のクルエルティーフリーへの決断が固まったのを覚えている。

 

どうして化粧品業界は動物実験を続けるのか

 

EU圏内ではもう10年以上前から化粧品における動物実験は禁止されている。アメリカでは昨年カリフォルニア州で動物実験がなされた化粧品の流通を禁止する法案が通った。

では、動物実験反対の傾向が世論的にも政治的にも強くなっている中、どうして動物実験を続ける会社やブランドが今も数多くあるのか

そこには大きく分けて2つの理由がある。これは先述のEUやカリフォルニア州の動物実験を排除する法案において例外にあたる項目で、実はこの例外がもたらす影響はすごく大きい

 

新しい成分が開発されて初めて市場に出る場合の動物実験の義務

 

化粧品業界には使用の安全が証明されている成分のリストがあり、そこにすでに載っている成分については多くの市場で新たな動物実験が免除されている。

しかしそこに載っていない新成分は、動物実験をし安全性を証明しなくてはいけない

雑誌などで見かける大手の化粧品会社の新しい美容液やクリームの広告を見てみて欲しい。何万円もするような代物で、覚えられないような名前の化学物質の独自開発の新成分配合で、シワやシミに劇的な効果をもたらすと謳う。そういった製品は新たに動物実験をされている可能性が高い。更に考慮したいのは、動物実験にかかったコストは何万円という商品価格に乗っかってきている。

シミやシワが消えるかもしれないその製品、手に取る前に一度よく考えてみて欲しい。シミにもシワにも悩んでいないであろう小動物が、強い薬品を塗布されて実験されていることを。しかも、一つの新成分の審査が通るには最低でも1,400匹以上の動物が犠牲になるとも言われている

 

中国政府が輸入化粧品に一貫して課している動物実験の義務

 

これは特に多くの誤解を生みやすい項目なので慎重に進めていく。

中国政府は、国内に輸入される化粧品全項目に動物実験を要求している。中国国内に流入する化粧品の一定のクオリティを確保することが目的とされている。

つまり、中国市場に参入したい外資化粧品ブランドは、例え本国では必要ではない場合も動物実験を行いそれを証明する書類を提出しないと中国市場での販売ができないのだ。

多くの機関が中国政府にこの規制の改正を求めていて、例えば人工皮膚・毛髪での実験など代替案の許可が訴えられている。しかし現状変わる気配はまだない。

この中国市場への参入の是非が、実はクルエルティーフリー ブランドを選ぶ上で大きな混乱を招いているので、次の項目で触れていく。

 

クルエルティーフリー表記の落とし穴

 

私がクルエルティーフリー ブランドを見極める上ですごく混乱したのが、各ブランドのオフィシャルサイトでの記述だ。言葉の綾を使って消費者の誤認を招いているものがすごく多い気がする。

 

NARS のケーススタディ

 

以前の記事でも例としてあげた NARS。以前はクルエルティーフリーであった NARS は、2017年に中国市場に進出した。そのビジネス決定に伴い方針を変更し、動物実験を開始した。

 

NARS オフィシャルサイトの記述

 

2019年5月現在の NARS 日本オフィシャルサイトの FAQ には以下の記述が見られる。

 

 

注目すべきは「法律で要求される場合を除き」という最初の文言だ。これは一体何を意味している?この一言で、それ以降の文章が示す意味はほぼ打ち消されてしまう。

 

NARS アメリカ オフィシャルサイトの FAQ にはこういった記述がある。

 

NARSは、法律で要求される場合を除き、動物実験を行っておりません。また、第三者に動物実験を依頼することもありません。NARS は業界やその他の協力者と一緒に世界中での動物実験の排除に積極的に取り組んでいるとともに、代替の実験手法の開発と受け入れにも働きかけています。私たちは消費者の健康と安全に専念し、最高のクオリティ基準を満たすことに努めています。私たちは世界中の女性にパワーを与える使命として、 NARS の美とアルチザンを世界中のもっと多くのファンに届けることに献身し続けます。

※THE LITTLE WHIM 訳

 

「法律で要求される場合を除き」とは?

 

法律で要求される場合」というのは、中国のことを指している。現在動物実験を法律で要求しているのは中国のみだ。

アメリカ版の記述では「法律で要求される場合を除き」という文言に加えて、「世界中の女性」、「世界中のもっと多くのファン」という言葉が出てくる。もちろん掲げるヴィジョンは素晴らしい – もっと多くの人に NARS の秀逸なコスメを届けるのは大切なこと。でもなぜその記述が、動物実験に関する FAQ に含まれているのか?それはつまり、中国市場に参入しもっと多くの人に NARS を届ける上で、動物実験を始めることは必要不可欠な決断だったということを言っているのだ。

 

中国での NARS のオフィシャルな商品展開を調べようと思ったが、アメリカ在住の私からインターネット上では確認ができなかった。ただ、北京だけでも3店舗あり、北京在住の友人に確認したところ日本やアメリカの NARS のカウンターと極めて同様の販売がされているようだ。ということは、中国市場で流通している NARS 製品は、どこの国で買っても動物実験がされているということになる

 

オフィシャルサイトでの記述を見た際、こういった背景を知らないと、NARS は動物実験をしていない、クルエルティーフリーだ、と勘違いしてしまう。これは間違いで、NARS はクルエルティーフリー ブランドではない。

 

親会社の方針

 

NARS を傘下に置く親会社である資生堂グループ オフィシャルサイト(英語)のサステナビリティの項目も見てみた。

 

動物実験には反対、代替手段への移行に取り組んでいる、と述べるページ

ただし動物実験による安全の確保が必要とされる場合は例外とする、と述べるページ

その例外とは中国である、と述べるページ

 

現状資生堂はこの方針をとっており、NARS をはじめとした中国市場に上陸している資生堂グループ傘下ブランドはクルエルティーフリーとは認められない。個人的にはこのページは2回もクリックしないと最後の結論にいけない仕組みになっていて、あまりクリアじゃないし誤解を招きやすい印象を受けた。

※ 資生堂グループ傘下にありつつ中国進出をしていないためクルエルティーフリーを保っているブランドもある。代表的な例はベアミネラル(日本上陸済み)と Buxom(日本未上陸)だ。

 

資生堂グループのように多くのブランドを抱える大手化粧品会社は他にもある。以下は、Business Insider が発表した2017年での化粧品業界のマトリックス

※ これは2017年のものであり、2019年5月現在、変更もいくつかあります。

 

 

ここにある7つの親会社グループの方針は、どれも100%クルエルティーフリーではなく、要求される市場での販売のためには動物実験をしている。しかしそこに含まれるブランドには、中国未上陸のためクルエルティーフリーのものもある。

ここには載っていないが、LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)グループも多くの化粧品ブランドを所有している上に、Sephora を運営している。故に傘下ブランドの多く、 Fenty Beauty、Marc Jacobs Beauty、Kat von D、Bite Beauty などは Sephora で独占的に販売されており、そしてこれらは中国に進出していないためクルエルティーフリーである。一方で、中国進出している Make Up Forever、Dior、Benefit などの例外もある。

 

…そう、要はものすごくややこしい!!!!

 

 

M·A·C のケーススタディ

 

M·A·C はエスティーローダー グループの傘下にあり、NARS 同様以前はクルエルティーフリーだったが、2005年から中国で販売がされている

 

M·A·C オフィシャルサイトの記述

 

以下はM·A·C のアメリカ オフィシャルサイトの FAQ からの抜粋だ。

 

M·A·Cは動物実験をしません。私たちは動物実験施設を所有せず、第三者に動物実験を依頼することもありません。私たちの製品の販売を許可する前に政府が動物実験を行い安全性を証明するケースもありますが、M·A·C 自身は動物実験を決して行いませんし、動物実験を終わらせる運動のリーダーであり続けます。その目的のため、私たちは誇りを持って IIVS という機関と共同し動物実験以外の実験方法の利用と受入れを広める活動をしています。

※THE LITTLE WHIM 訳

 

動物実験はしていないけれど、「私たちの製品の販売を許可する前に政府が動物実験を行い安全性を証明するケースもあります」って、何?見逃してはいけないこの一文。よくリサーチしてみると、これにも落とし穴がある。

 

「私たち」って誰?

 

M·A·C は確かに動物実験を遂行していないし、動物実験施設を持っていない。第三者にも依頼していない。でも、販売したい市場の政府によって動物実験が要求されている場合はその政府が動物実験を遂行することに同意し、そして驚くなかれ、その費用は M·A·C が払っているのだ

 

「M·A·Cは」とか「私たちは」という表記に惑わされてはいけない。M·A·C の社員が社内で行っていないだけで、そして M·A·C は直接第三者機関に依頼していないだけで、実際には M·A·C の製品は中国で売られるために確実に動物実験されている。つまり、M·A·C はクルエルティーフリー ブランドではない。

 

NARS と M·A·C のケーススタディからわかること

 

興味深いのは、どちらも中国進出以前はクルエルティーフリーであったということ。動物実験をしなくてもよかった製品を、たった一つのマーケットでのビジネスのために現在は動物実験を実行している現状について、私は個人的にすごく残念に感じる。

何より問題だと感じるのは、どちらもオフィシャルには「動物実験をしていない」という記述を含むにも関わらず、中国に進出しており、結論両ブランドは現状クルエルティーフリーではないということ。全ての消費者にクリアではない文言は、誤解を招いていると感じざるを得ない。

 

じゃあどうやって見極める?

 

紆余曲折の上、アメリカに住む私が最も信頼がおける情報源だと信じているのが、Logical Harmony という個人で運営されているウェブサイトだ。

 

 

Logical Harmony が認定するクルエルティーフリー ブランドの一覧はこちら。

 

 

立ち上げた Tashina Combs という女性はクルエルティーフリーのエキスパートで、ブランドが言葉の綾を使ってすり抜ける道を全て把握している。ブランドに、嘘がつけない質問のリストを投げかけて、回答とともにそれを証明する書類のコピーも回収し、彼女が更に専門家と一緒にじっくり見極めた上で100% クルエルティーフリーだと認定できる場合のみ、Logical Harmony のクルエルティーフリー ブランド リストに載せる。少しでも疑わしい場合は追加の質問や書類の要求をしクリアになるまでそれを続ける。

 

クルエルティーフリー コミュニティーでは彼女への信頼度は高く、ブランド側も真にクルエルティーフリーであるならばここに載ることは重要な意味を持つと認識しているくらい。

 

クルエルティーフリーかどうか見極め兼ねているブランドがあったら、ぜひ Logical Harmony で確認してみてください。

 

※ Sephora や Ulta で購入可能なアメリカやヨーロッパのブランドが中心です。日本のブランドに関してはグローバルな展開があるブランドは対象になっていますが、残念ながら日本国内やアジアでの流通が中心のブランドについては情報があまりありません。

 

企業やブランド、そして消費者にできること

 

すごく長い記事なのに、ここまでお付き合い頂いてありがとうございます。

今までの内容を踏まえて、私たちにできることってなんだろう?と考えてみます。

 

中国政府の方針改正への働きかけ

 

化粧品における動物実験の多くが実質上なくならない根本の原因は、中国政府の方針。これが変わらないことには、大きな変化は期待できない。

多くの化粧品会社が中国市場に参入し続けるのは、もちろん利益があるから。資本主義のもと、特に株式公開している会社は中国撤退の決定は簡単にはできない。成長著しい中国マーケットは逃せない。

しかしながら、先ほど挙げた NARS や M·A·C は残念ながらクルエルティーフリーではないが、オフィシャルサイトの記述にあるように、動物実験の代替を提案するなど実際に中国政府の説得に尽力しているのは間違いない。これはNARS や M·A·C に限った話ではなく多くのブランドが訴えている。中国での利益は欲しいが、そのために動物実験をせざるをえない状況には声をあげていて、親会社と一緒になって働きかけている点は賞賛に値する。

 

“Vote with your dollar”

 

私たち消費者にも力はある。もっと多くの人が動物実験の実態を知り、反対し、購入をやめることで、企業やブランドは何かに気づくかもしれない。一つの国のマーケットだけに集中することはできない。

先ほど述べたように、化粧品業界は大手グループがブランドを傘下に持ち成り立っている。抱えるブランドの中でもしあるブランドの売り上げが劇的に伸び、あるブランドが下降傾向にあったら、そしてその理由の一つとして前者はクルエルティーフリーで後者はそうでないとしたら。そうやって私たちは企業にメッセージを伝えることができる

更に忘れてはいけないのは、動物実験を行うには企業やブランドにとって膨大な費用が掛かり、それは消費者に返ってきている事実。そのブランドの商品をそれでも買い続けるということは、動物実験の費用を私たちが負担しているということ。

 

アメリカには “Vote with your dollar” という表現がある。ドルで投票しろ、つまりは私たち消費者の購買活動には一つ一つインパクトがあり、市場を動かす貴重な一票であるということ。「このアイテムが好き」「このブランドが好き」というのは、実際にお金が投じられることで企業にしっかり伝わるのだ。

 

最後に

 

私はメイクアップが大好きだし、コスメのショッピングはワクワクする。その大好きなコスメに動物の犠牲は一切必要ないし、そのワクワクするショッピングが動物実験反対を訴える力になるなら、それ以上のことはないと思う。それを、もっと多くの人にも共感して欲しいし、この記事を通して少しでも何かが伝われば嬉しい。

 

「化粧品 動物実験」や、”cosmetics animal testing” と検索すると、様々な情報とともに画像が閲覧できる。「刺激的な画像を含みます」という注意書きがあるものもあるが、その記述は私は必要ないと思う – 私たちが実際に日常的に消費しているものが関与している事実なのだから。知ることがまずは何より大切。そしてそこからどう行動を起こすかは、その人次第。

 

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