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クルエルティフリーについて知ってもらいたい4つのこと

2021年1月1日付けで、クルエルティーコスメに関する規制の大きな更新がありました。「【2021年アップデート】クルエルティフリーコスメの明るい兆しに小躍り(とはいえ、飛び上がって喜ぶにはまだ早い)」にて、新しい情報について書いています。

私は2018年の秋頃から、クルエルティフリーの化粧品のみを使うようになった。それ以前から動物実験への疑問はあり、迷ったらクルエルティフリーのものを選ぶようにしていたけれど、100%に徹底するようになった。

この半年間、クルエルティフリーについて理解を深めていく中で、思った以上にこの背景はややこしいことを知った

今回は、クルエルティフリー 101 としてクルエルティフリーって何!?という基本的なことから、もっと深い部分まで説明していこうと思う。どうして動物実験が今も続けられているかや、クルエルティフリーの会社・ブランドを見極める上での落とし穴など、まさに私がいち消費者としてこの半年間向き合ってきたこともまとめる。

1. クルエルティフリーとは?

クルエルティフリーという言葉は、文字通りだと「残虐性 (cruelty) がない (free)」という意味。

具体的には、オックスフォード辞書によると:

(of cosmetics or other commercial products) manufactured or developed by methods that do not involve experimentation on animals.

(化粧品や消費財において)製造や開発の過程で動物実験を必要とする手段がとられていないもの

※THE LITTLE WHIM 訳

原料や製品の安全性や有効性を確認するため、動物実験は化粧品のみならず様々な分野で行われている。薬品は大きな例だ。ただ、化粧品・消費財と薬品は大きく異なる分野であり、医療における動物実験に関しては、現状は個人的には反対していない(不必要・余剰・非倫理的な動物実験があるならばなくなって欲しいし、同時に代替案などの開発が進むことを願っている)。一方で、化粧品・消費財における動物実験は必要ないと訴える意見は今世界中で増えている。

動物実験にはウサギ、ラットやネズミがよく使われる。その中でも、化粧品のクルエルティフリーのシンボルとしてウサギをよく目にするので調べたことがある。ウサギは化粧品の動物実験によく使われるそうで、その理由の一つとして、ウサギは(痛みに対して)おとなしいからだという記述を見つけた。それを読んだ時、私のクルエルティフリーへの決断が固まったのを覚えている。

2. どうして化粧品業界は動物実験を続けるのか

EU圏内ではもう10年以上前から化粧品における動物実験は禁止されている。アメリカでは昨年カリフォルニア州で動物実験がなされた化粧品の流通を禁止する法案が通った。

では、動物実験反対の傾向が世論的にも政治的にも強くなっている中、どうして動物実験を続ける会社やブランドが今も数多くあるのか

そこには大きく分けて2つの理由がある。これは先述のEUやカリフォルニア州の動物実験を排除する法案において例外にあたる項目で、実はこの例外がもたらす影響はすごく大きい

2-1. 新しい成分が開発されて初めて市場に出る場合の動物実験の義務

化粧品業界には使用の安全が証明されている成分のリストがあり、そこにすでに載っている成分については多くの市場で新たな動物実験が免除されている。

しかしそこに載っていない新成分は、動物実験をし安全性を証明しなくてはいけない

雑誌などで、化粧品会社の新しい美容液やクリームの広告を見ることがある。何万円もするような代物で、覚えられないような名前の化学物質の独自開発の新成分配合で、シワやシミに劇的な効果をもたらすと謳う。そういった、新しく開発された成分を含む製品は、安全性の履歴がないため、動物実験をされている可能性が高い。さらに考慮したいのは、動物実験にかかったコストは何万円という商品価格に乗っかってきている – つまり購入額に含まれている。

シミやシワが消えるかもしれないその製品、手に取る前に一度よく考えたい。シミにもシワにも悩んでいないであろう小動物が、強い薬品を塗布されて実験されていることを。

2-2. 中国政府が輸入化粧品に一貫して課している動物実験の義務

これは特に多くの誤解を生みやすい項目なので慎重に進めていく。

中国政府は、国内に輸入される化粧品全項目に動物実験を要求している(2019年3月現在)。中国国内に流入する化粧品の一定の安全性とクオリティを確保することが目的とされている。必須の動物実験には、具体的には大きく分けて2種類の規制がある。pre-market animal testing(市場展開前の動物実験)と、post-market animal testing(市場展開後の動物実験) だ。

pre-market animal testing は、特に大きなインパクトを持つ。外資化粧品ブランドは、たとえ本国では免除されていても、動物実験を行いそれを証明する書類を提出しないと中国市場での販売ができないのだ。

post-market animal testing は、市場展開後に中国政府が、特に中国国内の消費者から「肌が荒れた」「目に染みた」などの意見が送られた際に発生する。政府関係者が独自に商品を入手して動物実験をし安全性を確認する。これはたとえ pre-market animal testing をし認可が降りていても、同様に起きる可能性がある。ブランド側にはコントロールする術がない。

世界中の多くの機関が、中国政府にこの規制の改正を求めていて、例えば人工皮膚・毛髪での実験など代替案の許可が訴えられている。

ここからわかるように、中国市場への展開の是非が、実はクルエルティフリー ブランドを選ぶ上で大きな混乱を招いているので、次の項目で触れていく。

追記(2020年7月)

中国政府の pre-market animal testing が廃止になる可能性が出てきた。WWDの記事によると、2021年1月からこれが実現する話し合いが進んでいるようだ。対象になるのは「一般的な」化粧品。まだ不確かな部分もあり、中国における化粧品の動物実験の完全廃止とは言えないが、大きな前進には違いない。

3. クルエルティフリー表記の落とし穴

私がクルエルティフリー ブランドを見極める上ですごく混乱したのが、各ブランドのオフィシャルサイトでの記述だ。言葉の綾を使って消費者の誤認を招いているように感じ取れるものが多い気がする。

3-1. NARS のケーススタディ

以前の記事でも例としてあげた NARS。以前はクルエルティフリーであった NARS は、2017年に中国市場に進出した。そのビジネス決定に伴い方針を変更し、クルエルティフリーではなくなった。

NARS オフィシャルサイトの記述

2019年5月現在の NARS 日本オフィシャルサイトの FAQ には以下の記述が見られる。

NARS J

注目すべきは「法律で要求される場合を除き」という最初の文言だ。これは一体何を意味している?この一言で、それ以降の文章が示す意味はほぼ打ち消されてしまう。

NARS アメリカ オフィシャルサイトの FAQ にはこういった記述がある。

NARS US

NARSは、法律で要求される場合を除き、動物実験を行っておりません。また、第三者に動物実験を依頼することもありません。NARS は業界やその他の協力者と一緒に世界中での動物実験の排除に積極的に取り組んでいるとともに、代替の実験手法の開発と受け入れにも働きかけています。私たちは消費者の健康と安全に専念し、最高のクオリティ基準を満たすことに努めています。私たちは世界中の女性にパワーを与える使命として、 NARS の美とアルチザンを世界中のもっと多くのファンに届けることに献身し続けます。

※THE LITTLE WHIM 訳

「法律で要求される場合を除き」とは?

法律で要求される場合」というのは、中国のことを指している。現在動物実験を法律で要求している数少ない例の中で大きいのは中国だ。

このアメリカ版の記述は、何度か読むうちにあることに気づく・・・2つの異なる内容が合体しているではないか?動物実験に関する内容から、気づけば、「世界中の女性にパワーを与える」、「世界中のもっと多くのファンに届ける」という話に発展している。なぜ、世界中の人々に NARS を届けるミッションが、動物実験に関する FAQ に含まれているのか?それはつまり、1. 動物実験を始めるという決断をし、2. 中国市場に参入しもっと多くの人に NARS を届けることにした、ということを言っていることに気づく。この 1 と 2 は、関係性があるのだ。

中国での NARS のオフィシャルな商品展開を調べようと思ったが、アメリカ在住の私からインターネット上では確認ができなかった。ただ、北京だけでも3店舗あり、北京在住の友人に確認したところ日本やアメリカの NARS のカウンターと極めて同様の販売がされているようだ。ということは、中国市場で流通している NARS 製品は、どこの国で買っても事実上動物実験がされている、と私は解釈する

オフィシャルサイトでの記述を見た際、こういった背景を知らないと、NARS は動物実験をしていない、クルエルティフリーだ、と勘違いしてしまう。これは間違いで、NARS はクルエルティフリー ブランドではない。

親会社の方針

NARS は、資生堂グループ の傘下にある。つまりはNARS にとって親会社である資生堂のオフィシャルサイト(英語)にある、サステナビリティの項目も見てみた。

動物実験には反対、代替手段への移行に取り組んでいる、と述べるページ

shiseido1

ただし動物実験による安全の確保が必要とされる場合は例外とする、と述べるページ

shiseido2

その例外とは中国である、と述べるページ

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まとめると、

資生堂は動物実験には反対している→ただし、法律で動物実験を要求する地域ではそれに従う→ちなみにそれは中国だ

グローバル企業である資生堂は、現状この方針をとっていることになる。

これに沿って考えると、やはりNARS をはじめとした中国市場に上陸している資生堂グループ傘下ブランドはクルエルティフリーとは認められない。個人的には、資生堂のウェブサイトのこの情報は、2回もクリックしないと最後の結論にいけない仕組みになっていて、あまり明瞭ではなく、誤解を招きやすい印象を受けた。

※ 資生堂グループ傘下にありつつ中国進出をしていないためクルエルティフリーを保っているブランドもある。代表的な例はベアミネラル(日本上陸済み)と Buxom(日本未上陸)だ。

資生堂グループのように多くのブランドを抱える大手化粧品会社は他にもある。以下は、Business Insider が発表した2017年での化粧品業界のマトリックス

※ 2017年のものであり、2019年5月現在、変更もいくつかあります。

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ここにある7つの親会社グループの方針は、どれも100%クルエルティフリーではなく、要求される市場での販売のためには動物実験をしている。しかしそこに含まれるブランドには、中国未上陸のためクルエルティフリーのものもある。

ここには載っていないが、LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)グループも多くの化粧品ブランドを所有している上に、Sephora を運営している。故に傘下ブランドの多く、 Fenty Beauty、Marc Jacobs Beauty、Kat von D、Bite Beauty などは Sephora で独占的に販売されており、そしてこれらは中国に進出していないためクルエルティフリーである。一方で、中国進出している Make Up Forever、Dior、Benefit などの例外もある。

…そう、要はものすごくややこしい!!!!

3-2. M·A·C のケーススタディ

M·A·C はNARS 同様以前はクルエルティフリーだったが、2005年から中国で販売が開始され、クルエルティフリーではなくなった。ちなみに M·A·C は、エスティーローダー グループの傘下にあり、エスティーローダー グループは必要に応じて動物実験を行う。資生堂 – NARS の関係性と同様だ。

M·A·C オフィシャルサイトの記述

以下は、M·A·C のアメリカ オフィシャルサイト(英語)の FAQ からの抜粋。

mac

M·A·Cは動物実験をしません。私たちは動物実験施設を所有せず、第三者に動物実験を依頼することもありません。私たちの製品の販売を許可する前に政府が動物実験を行い安全性を証明するケースもありますが、M·A·C 自身は動物実験を決して行いませんし、動物実験を終わらせる運動のリーダーであり続けます。その目的のため、私たちは誇りを持って IIVS という機関と共同し動物実験以外の実験方法の利用と受入れを広める活動をしています。

※THE LITTLE WHIM 訳

動物実験はしていないけれど、「私たちの製品の販売を許可する前に政府が動物実験を行い安全性を証明するケースもあります」って、何?見逃してはいけないこの一文。よくリサーチしてみると、これにも落とし穴がある。

「私たち」って誰?

M·A·C は確かに動物実験を遂行していないし、動物実験施設を持っていない。第三者にも依頼していない。でも、販売したい市場の政府によって動物実験が要求されている場合はその政府が動物実験を遂行することに同意し、そして驚くなかれ、その費用は M·A·C が払っているのだ

「M·A·Cは」とか「私たちは」という表記に惑わされてはいけない。確かに、M·A·C の社員が社内で行っていない。そして確かに、 M·A·C が直接第三者機関に依頼していない。しかし実際には、M·A·C の製品は中国での販売において、中国政府によって動物実験されている。つまり、M·A·C はクルエルティフリー ブランドではない。

3-3. NARS と M·A·C のケーススタディからわかること

興味深いのは、どちらも中国進出以前はクルエルティフリーであったということ。ほかの国や地域での基準では動物実験をしなくてもよかった製品を、たった一つのマーケットでのビジネスのために現在は動物実験を実行している現状について、私は個人的に非常に残念に感じる。

その上で、いち消費者として不親切・不誠実な印象を受けるのは、どちらもオフィシャルには「動物実験をしていない」という記述をなにかしらの形で含むにも関わらず、中国に進出しており、結論両ブランドは現状クルエルティフリーではないということ。すべての消費者にクリアではない文言は、誤解を招いていると感じざるを得ない。

3-4. じゃあどうやって見極める?

英語で豊富な情報量がある国際的な認定機関や私営でリサーチしているウェブサイトはたくさんある。私が普段よく利用するのは以下の5つ。

Cruelty Free International | Leaping Bunny (国際的認定機関)
PETA | Beauty Without Bunnies (アメリカを拠点とする認定機関)
Logical Harmony | Cruelty Free Brand List (私営)
Cruelty Free Kitty | Cruelty-Free Brands (私営)
Ethical Elephant | Cruelty-Free Brand List (私営)

私がその中でも特に信頼を置いているのは、Leaping Bunny と Logical Harmony の組み合わせ。

どうして国際的な認定機関があるのに私営も参考にするのか?Logical Harmony を立ち上げ運営する Tashina Combs という女性はクルエルティフリーのエキスパートで、ブランドが言葉の綾を使ってすり抜ける道を把握した上でしつこいほどに問い合わせをする。ブランドに、嘘がつけない質問のリストを投げかけて、回答とともにそれを証明する書類のコピーも回収し、彼女が更に専門家と一緒にじっくり見極めた上で100% クルエルティフリーだと認定できる場合のみ、Logical Harmony のクルエルティフリー ブランド リストに載せる。少しでも疑わしい場合は追加の質問や書類の要求をしクリアになるまでそれを続ける。

クルエルティフリー コミュニティーでは彼女への信頼度は高く、ブランド側も真にクルエルティフリーであるならばここに載ることは重要な意味を持つと認識しているくらいだ。

クルエルティフリーかどうか見極め兼ねているブランドがあったら、ぜひ Logical Harmony で確認してみてください。

Logical Harmony Cruelty-Free Brand List
https://logicalharmony.net/cruelty-free-brand-list/

※ Logical Harmony はアメリカ拠点であり、Sephora や Ulta で購入可能な北米やヨーロッパのブランドが中心です。日本のブランドに関してはグローバルな展開があるブランドは対象になっていますが、残念ながら日本国内やアジアでの流通が中心のブランドについては情報があまりありません。

4. 企業やブランド、そして消費者にできること

すごく長い記事なのに、ここまでお付き合い頂いてありがとうございます。

今までの内容を踏まえて、私たちにできることってなんだろう?と考えてみます。

4-1. 中国政府の方針改正への働きかけ

化粧品における動物実験の多くが実質上なくならない根本の原因は、中国政府の方針。これが変わらないことには、大きな変化は期待できない。

多くの化粧品会社が中国市場が欲しいは、もちろん利益があるから。資本主義のもと、特に株式公開している会社は中国撤退の決定は簡単にはできない。成長著しい中国マーケットは逃せない。

しかしながら、先ほど挙げた NARS や M·A·C は残念ながらクルエルティフリーではないが、オフィシャルサイトの記述にあるように、動物実験の代替を提案するなど実際に中国政府の説得に尽力しているのは間違いない。これはNARS や M·A·C に限った話ではなく多くのブランドが訴えている。中国での利益は欲しいが、そのために動物実験をせざるをえない状況には声をあげていて、親会社と一緒になって働きかけている点は賞賛に値する。

4-2. “Vote with your dollar”

私たち消費者にも力はある。もっと多くの人が動物実験の実態を知り、反対し、購入をやめ、さらにはその意見をソーシャルメディアやEメールを通して届けることで、企業やブランドは何かに気づくかもしれない。

先ほど述べたように、化粧品業界は大手グループがブランドを傘下に持ち成り立っている。抱えるブランドの中で、クルエルティフリーブランドとそうでないブランドの人気に差が生まれたら、なにか気づいてもらえるかもしれない。問い合わせのメールが増えたら、動いてくれるかもしれない。そうやって、私たちは企業にメッセージを伝えることができる

さらに覚えておきたいのは、動物実験を行うには企業やブランドにとってまとまった費用が掛かり、それは消費者に返ってきている事実。そのブランドの商品を買い続けるということは、動物実験の費用を私たちが負担しているということ。

アメリカには “Vote with your dollar” という表現がある。ドルで投票しろ、つまりは私たち消費者の購買活動には一つ一つインパクトがあり、市場を動かす貴重な一票であるということ。「このアイテムが好き」「このブランドが好き」というのは、実際にお金が投じられることで企業にしっかり伝わるのだ。

私は、動物実験をしていたり、情報が曖昧なブランドには、購入をしないだけではなく直接問い合わせや意見を送るようにもしている。

最後に

私はメイクアップが大好きだし、コスメのショッピングはワクワクする。その大好きなコスメに、動物の利用・搾取は必要ないと思っている。ワクワクがもっと純粋なものになって欲しい。

「化粧品 動物実験」や、”cosmetics animal testing” と検索すると、様々な情報とともに画像が閲覧できる。「刺激的な画像を含みます」という注意書きがあるものもあるが、その記述は私は必要ないと思う – 私たちが実際に日常的に消費しているものが関与している事実なのだから。

クルエルティフリーのコスメってどんなのがあるの?興味がある方はぜひこちらの記事も!

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