ヴィーガンコスメとクルエルティフリーコスメの違い

THE LITTLE WHIM ではここ2年ほど、コスメに関してはクルエルティフリーに限定して取り上げてきており(それ以前のクルエルティフリーではないコスメが登場する記事は、現在は非公開になっています)、昨年からはそれに加えてヴィーガンのプロダクトだけになっている。

記事によっては、ヴィーガンコスメとクルエルティフリーコスメの条件を明確にするため、以下のような但し書きを挿入している。

<参考>
ヴィーガン: 動物由来の成分が含まれていない
クルエルティフリー: 原料・製品の製造・開発・市場参入の過程で、あらたに動物実験を必要とする手段がとられていない
※ THE LITTLE WHIM では、ブランドはクルエルティフリー、プロダクトはクルエルティフリーブランドの中からヴィーガンのものを選んでいます。しかしブランドによってはヴィーガンではないプロダクトを扱っている場合もあるので注意が必要です。

ヴィーガンコスメやクルエルティフリーコスメで検索して THE LITTLE WHIM にたどり着いた方の多くはすでにこの2つの違いをご存知だと思うけれど、今一度、ポイントをしっかり確認したい。今回このような記事を書こうと思ったのには理由もあり、それについても… 。

1. ヴィーガンコスメとは

ヴィーガンコスメとは、動物由来の成分を含まない化粧品を指す(… この定義には実は語弊があるのだけれど、それについては後半でもう一度戻ってきます)。プラントベース(植物由来)と呼ばれることもあるが、これは動物由来の成分を含まない上に、植物からの成分に重視していることを強調する場合もある。

ヴィーガンというと肉・魚・乳製品・卵などを使わない食事を連想する方が多いと思うけれど、ヴィーガニズムは生活から動物の搾取を可能な限り避ける考え方であり、食べ物に限定したものではない。身近なものだとファッションでも同様で、ファー・皮革・ウール・ダウンなどが排除する対象になる。

化粧品に含まれる動物由来成分にはどういったものがあるか。以前私が執筆した IDEAS FOR GOOD の「欧米で関心が高まるクルエルティフリーの化粧品。動物を守る新しい考え方とは?」でも挙げた、代表的なものは以下の通り。

  • ハチミツ
  • ミツロウ
  • コラーゲン(動物の骨や皮膚のたんぱく質)
  • グリセリン(動物の油脂)
  • スクワラン(サメの肝臓の油脂)
  • ケラチン(動物の角や毛のたんぱく質)
  • ラノリン(羊毛の油脂)
  • エラスチン(牛の靭帯や大動脈)
  • コチニール色素(昆虫の赤色色素)
  • ムスク(ムスク鹿の分泌液)
  • 化粧用・毛髪用のブラシ、つけまつげ(リス、イノシシ、ミンクなどの毛)

例えばスキンケアの場合、保湿やシワの改善などに効果があるとして含まれている成分には、私たちと同じ動物の体から得られているものがたくさんある(植物由来と明記されている場合を除く)。

レンダリング(rendering)という言葉を聞いたことをあるだろうか。これは、食用に使われる畜産物の「肉として食べられない部分」や育成中に命を落とした動物を他の産業に回すこと。肉が除かれた後の動物の皮や骨、内臓などの様々な部分は私たちの生活の中で至る所で使われることになる。ゼラチンや中華スープなどの顆粒だしは加工食品業で利用されている例だ。そしてそれは化粧品にも使われる。

※レンダリングについて詳しく知りたい方は、「レンダリング 畜産」と検索すると基本的な情報を得られます。画像を見ると正直衝撃を受けると思います。

深く考えていなかった頃、こういったレンダリングによって化粧品に利用される動物の体の一部を顔や髪などに塗っていたとは知りもしなかった。他にもハチミツは酷使されるハチが集めたものを取り上げているわけだし、口紅やチークブラッシュの赤色を出すコチニール色素は昆虫をすりつぶしたものと聞くと・・・。そして動物の毛を使ったブラシやつけまつげなどはもってのほか。知ってしまったからには、私はヴィーガンコスメのみを選ぶようになった。

ヴィーガンコスメを選ぶ上でまずできるのは、ヴィーガン認定がされているものを探すこと。代表的な国際的認定機関は以下の2つ。

vegansociety

The Vegan Society
https://www.vegansociety.com/

veganorg

Vegan Action
https://vegan.org/

最近は、欧米のコスメブランドを中心に、認定は受けていなくても動物性の原料が含まれない製品に関してウェブサイト上やパッケージにヴィーガンであることの明記が増えている。そして、どの製品にも動物性を使用しない100%ヴィーガンブランドもあるので、心配な方はそういったブランドから選ぶのがいいだろう。

2. クルエルティフリーコスメとは

クルエルティフリーコスメとは、原料・製品の製造・開発・市場参入の過程で動物実験を必要とする手段がとられていない化粧品を指す。ヴィーガンコスメは原料が何に由来するかが焦点であるのに対して、クルエルティフリーはコスメブランドそのものの方針といった解釈だ。各ブランドがビジネスをする上で動物実験をしているかどうか、という点がカギになる。

クルエルティフリーについては私は散々書いてきたので、今回は細かい説明を省くけれど、詳しく知りたい方は私が今までに執筆した以下の記事を読んでいただきたい。

【クルエルティフリーに関する記事】

– 
クルエルティフリーについて知ってもらいたい4つのこと (THE LITTLE WHIM)
– 
ヴィーガンコスメ情報も掲載!クルエルティフリーコスメのブランドリスト (THE LITTLE WHIM)
ヴィーガンコスメとクルエルティフリースメの違い (THE LITTLE WHIM)
クルエルティフリーかどうかわからない?じゃあ自分で聞いてみよう (THE LITTLE WHIM)
–  
let’s chat cruelty-free beauty(honeyhands)  日英バイリンガル
– 
欧米で関心が高まるクルエルティフリーの化粧品。動物を守る新しい考え方とは? (IDEAS FOR GOOD)
 用語集: クルエルティフリー (IDEAS FOR GOOD)

2021年1月1日付けで、クルエルティーコスメに関する規制の大きな更新がありました。「【2021年アップデート】クルエルティフリーコスメの明るい兆しに小躍り(とはいえ、飛び上がって喜ぶにはまだ早い)」にて、新しい情報について書いています。

ヴィーガンは原料次第なので、配合成分を見れば(難しさはあるけれど)個人でも判断することは可能。不安な場合はブランドに問い合わせれば、白黒はっきりした回答がもらえるはず。

一方で動物実験に関しては、各企業やブランドが動物実験を行ったかどうかは消費者にはわからない透明性に欠ける企業も多いにあるのが現状だ。「動物実験はしていません(法律で要求される一部の地域を除き)」という記述がある場合、これは輸入化粧品に市場展開前・市場展開後の動物実験を法律で課している中国で販売しているブランドがよく使う言葉の綾だ。更には、「我が社は動物実験を行いません」と記述しつつも、第三者機関に動物実験を委託していたり他社から調達する原料が動物実験されている場合もある。

クルエルティフリーについても、認定をはじめ情報源はたくさんある。国際的な認定機関は以下のもの。

LeapingBunny

Leaping Bunny (Cruelty Free International)
https://www.crueltyfreeinternational.org/

私営でクルエルティフリー情報を発信している、信頼のおけるサイトもいくつかあるので、私はそれらを組み合わせて判断している。

Logical Harmony | Cruelty Free Brand List
Cruelty Free Kitty | Cruelty-Free Brands
Ethical Elephant | Cruelty-Free Brand List

3. ヴィーガンコスメ=クルエルティフリーコスメではない!?

ここまで読んでいただいた方には、化粧品において、「ヴィーガン=クルエルティフリーではない」ということがお察しいただけたのではないでしょうか。ざっくり違いをまとめると以下の通り。

  • ヴィーガンは製品の原料で判断するのに対し、クルエルティーはブランドの動物実験に関する方針で判断する。
  • ヴィーガンは製品単位であり、ブランド単位にもなり得る。一方でクルエルティフリーはブランド単位で考える必要がある。

私はヴィーガンかつクルエルティフリーのプロダクトを選ぶようにしている。確認していると、どちらかはクリアしつつももう一方はアウトな場面に出会うことは実際に多々ある。次ではそれらを具体的に説明していきます。

3-a. クルエルティフリーだけど
ヴィーガンではないケース

クルエルティフリーブランドが展開する製品の中には、動物由来の成分を含む場合がある。これがこのクルエルティフリーだけどヴィーガンではないケースに当たる。

私はこれを避けているけれど、人によっては仕方がないという場合もあるようだ。例えば、動物実験なしは大前提な上で、次に重要な項目として環境保護の観点からプラスチックを避け、ガラスや紙、アルミ容器のプロダクトを選びたい人は増えている。しかしそういったいわゆるゼロウェイストのものの中には、固形になりやすい保湿成分であるミツロウが使われることが多い。エシカルにソースされたと謳うミツロウもあるので、その場合は厳密にはヴィーガンではないけれどサステナビリティを優先してミツロウ入りを選ぶ方は実際に存在するのではないだろうか。

例えばブルックリンにあるゼロウェイストのお店、 Package Free Shop にあるコスメにはそういった製品も多い。

ヴィーガニズムもサステナビリティも環境や自然に配慮した考え方なのに、対立してしまうことがある例だ。

3-b. ヴィーガンだけど
クルエルティフリーではないケース

これは、実は私が今回この記事を書こうと思ったきっかけになったもの。正直、ヴィーガンという売り文句を使っているけれど、ちょっと待って このブランド動物実験していなかったっけ? と思うマーケティングが増え始めているのが気になっている。

そもそも思い出して欲しい、先述の通り、ヴィーガニズムは生活から動物の搾取を可能な限り避ける考え方であり、動物実験は明らかに動物を犠牲にしているのでアウトだ。それなのに、クルエルティフリーではない(動物実験をしている)ブランドの製品がたまたまか意図的かわからないけれど原料に動物性が含まれていない時に、「この製品はヴィーガンです」と販売するのはいかがなものか

その例の一つに、最近発売された Sally Hansen(サリー・ハンセン)の「100%ヴィーガン」なネイルポリッシュがある。

sallyhansen
image via Sally Hansen

この新商品は、有害(トキシック)な成分を使用せず、動物由来の原料を含まないそう。しかし、 Sally Hansen は動物実験をしているブランドだ。ヴィーガンという売り文句は語弊があるし、消費者を惑わしていると思わざるを得ない。ヴィーガンというキーワードを使うと「動物に優しい」「環境に配慮している」という感覚が生まれることを利用しているとは言えないか。

もう一つ、私はずっと腑に落ちないことがある。それは、ヴィーガンとして知られる俳優のナタリー・ポートマンがディオールの化粧品や香水の宣伝をしていることだ。なぜなら、ディオールは動物実験をしているから(そして製品も特別ヴィーガンではないというか、意識していないと思う)。

彼女はハリウッドで成功しており、美しく賢いロールモデルとして影響力がある。ヴィーガンとしての発言も多い。その彼女が動物実験されている化粧品や香水を打ち出す広告に起用されているのは、どうしても違和感がある。彼女に憧れ、ヴィーガニズムにも関心を持つ消費者に、「ナタリー・ポートマンも使っているのなら」とディオール購入を促しているのってどうなの?

missdior
image via Dior

めちゃめちゃ非現実的な例え話だけれど、もし私がナタリー・ポートマンほど影響力のあるパーソナリティだったとしたら – 私は動物実験していなくてヴィーガンでサステナブルなコスメブランドの宣伝をしたいよ。

ヴィーガンだけど、クルエルティフリーではない – これって私はナシだと思うんだけど、みなさまはどう思いますか?

4. ヴィーガンかつクルエルティーフリーがいいよね

ここまで長かったのに、読んでくださってありがとうございます。

最後に、ややこしいことはない、ヴィーガンかつクルエルティフリーの代表的なコスメブランドを簡単にまとめます。日本のブランドではないのが(特に環境負荷の面から)申し訳ないのだけど、日本に上陸していたり日本で利用者も多い iHerb から購入可能なものもあるよ。

– Axiology (https://axiologybeauty.com/)
– Derma E (https://dermae.com/) ※ iHerb からも購入可能
– e.l.f. (https://www.elfcosmetics.com/) ※ iHerb からも購入可能
– Herbivore (https://herbivorebotanicals.jp/) ※ 日本上陸!
– Milk Makeup (https://www.milkmakeup.com/)
– Pacifica (https://www.pacificabeauty.com/) ※ iHerb からも購入可能

これらのブランドも登場する上に、ヴィーガン商品が見つかりやすいクルエルティフリーブランドをまとめているので、下のリンクもぜひ。

今回知ったことで、「やだな」「なんかおかしいな」「選び方を変えたいな」と思ったら、ぜひじっくり調べてみて欲しい。今あるものはしっかり使い切り、そしてこれから購入するものについて、「かわいい」「流行ってる」「あの人が使ってる」「プチプラ」といった理由だけでなく、ヴィーガン&クルエルティフリー、そして可能な限りサステイナビリティにも配慮されたものを選ぶ人が増えれば、コスメの世界はもっと楽しく美しくなると私は思っています!

5. 参考文献

Additional sources for this article include:

– Cruelty-Free Brand List (Logical Harmony)
– Leaping Bunny Standard (Cruelty Free International)
– Animal-Derived Ingredients List (PETA)

Share on twitter
Share on facebook
Share on linkedin