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ここのところずっと、文章を書くよりインプットに集中している。ポッドキャストや YouTube も好きだけれども、私の場合はなにより本が好きだ。ゆっくり自分のペースで、線を引いたり付箋をつけながらページをめくっていくインプットが、自分にはもっとも合っている。
なので今日は、インプット源である書店への感謝を込めて、私の住む街にあるインデペンデント(独立系)運営の書店・古本書店を一つの記事にまとめアウトプットすることにした。
「本を手に入れる」という体験は特別なものだと私は思っているし、だからこそ、「探す」「迷う」「相談する」など、本との出会いのプロセスは大切にしたい。
そうやって本と触れ合うなかで、書店と自分の間には、密な関係性が築かれていく。
私はアマゾンプライム会員を解約したし、大型チェーン書店もほぼ利用しない。そのかわりに私がサポートする本屋さんは、ローカルなビジネス。(そういった場所が近くにあって、それを利用できるのは、私が持つ特権なんだよな……。)
その多くは規模が決して大きくなく、ゆえに品揃えは限られ、どこもいい意味でそれなりにクセがある。新しい本でも中古本でも、キュレーションにはパーソナリティが表れるわけで、それは通ううちにわかってくる。なにか特定の本を探しているとき、「あの本屋さんならきっと置いてるはず」と頭に浮かんだり、漠然と読みたいものはあるけれどどの本を手に取ればいいかわからないときも、「あの書店に行って相談してみよう」と思える。
それと同時に、政治的・社会的にさまざまな思想やムーブメントがひっきりなしに湧いている今、正直触れたくない書籍もある。いろんな本を読み、異なる意見も聞いた方がいいとはいえ、どうしてもイヤなものはイヤだ。一線をはるかに越えた書籍を、もしかしたら気付かぬうちにでも読んでしまうことはなく、できたら目に入ることも避けられる、安全・安心な場所が欲しい。
先日、書籍も多数発表している日本の某著名人によるユーチューブでのヘイト発言が問題になった際、幕張にある lighthouse という小さな書店の意見がTwitterで流れてきた。本屋さんに足を運ぶ客として読んで、とてもしっくりきた。
ヘイト本デマ本、無自覚な本屋は「こんなもん間に受ける人いないだろ」などと思って置いてるんでしょうけど、あなたは八百屋に腐った野菜があると思ってお店の棚を見ますか?という話です。逆に言えば私たち本屋は信頼されてるんです。だからこそ裏切ってはならない。「こんなもん」と思うなら置くな。
— 本屋lighthouse(ライトハウス)〈幕張支店〉 (@book_lighthouse) August 12, 2021
うんうん、書店と客の信頼関係って、あるよね。だから、好きなアイデンティティを持つ本屋さんはとことん応援したい。
どこにお住まいであっても、独立系書店・古本書店をサポートすることが可能な環境であれば、それを楽しんでいる方々はきっといっぱいいるはず。
ニューヨークで私が本と体験を求めて通う場所に、もしご興味があったら、バーチャルに一緒にめぐりましょう。在ニューヨークの方は、もしよかったらご参考に。近くない方は、ここでは写真やインスタグラムを載せているので、お店のアイデンティティをさらにじっくり見てみるのは楽しいかも。
所有しないで本を楽しむ方法も利用するので、それも最後に「おまけ」として記載しました。
※ 私がよく足を運ぶ範囲内でなので、マンハッタン、ブルックリン、クイーンズの地区別で、そのなかで思いつくままに、順不同です。
※ 古本書店と記載していても、一部新品の書籍を扱っているお店もあります。または逆のケースもあります。
マンハッタン
Bluestockings Cooperative
ロウワーイーストサイドにある、従業員による所有であるコーオペレティブ型運営の書店。LGBTQ+のメンバーが多く、ジェンダーやセクシュアリティ、社会に変革を起こすムーブメントなどに特化した書籍を多く扱う。
https://bluestockings.com
Mercer Street Books
グリニッジビレッジ、ニューヨーク大学の近くにある古本書店。30年以上の歴史を持つ。音楽やシアターアーツ関連の読みものも多く揃っている。中古レコードの取り扱いもあり。
http://www.mercerstreetbooks.com
Codex Books
ノーホーに位置し、古本を中心にぎゅーーっと詰まった本棚が、決して広くない店内どこまでも続く。初版や絶版などのレア本も扱う。お店の外壁にある、見覚えのある方の風刺画のような肖像画……。
https://codex-books-llc.square.site/
Unoppressive Non-Imperialist Bargain Books
もう名前からしてすごい(非抑圧とか、非帝国主義とか)。30年以上、帽子がトレードマークのオウナー店長がウェストビレッジでずっと運営している書店。すごく狭くてごちゃごちゃしているのだけれど、キュレーションがめちゃくちゃ濃い。
http://unoppressivebooks.blogspot.com
Three Lives & Co.
ウェストヴィレッジの古い街並みの角にたたずむ、伝説の書店。インスタグラムはないようなのだけれど、(よくもわるくも?)写真映えがすごい。
http://threelives.com
Left Bank Books
ウェストヴィレッジにある、アートやファッションの古本が揃うお店。デザイナーの友人から、インスピレーションを得るのによく通うとおしえてもらった。私は詳しくないのでよくわからないけれど、どうやらレアなヴィンテージ書籍も多いよう。
https://www.leftbankbooksny.com
McNally Jackson
今回紹介するなかでおそらくもっとも規模が大きい書店がこちら。ノリータに一号店を構え、今はマンハッタンではシーポートにもう1店舗、ブルックリンにもウィリアムズバーグとダウンタウン・ブルックリンの2店舗ある。広々とした店内でさまざまなジャンルに触れられる。自主出版のサービスあり。
https://www.mcnallyjackson.com
The Corner Bookstore
グッゲンハイム美術館の数ブロック北、アッパーイーストサイドにあるこちらの創業は1978年だとか。地元の本屋さんといった感じで、地域のコミュニティに愛されているのが、訪れるたびに感じられるあたたかい場所。
https://cornerbookstorenyc.com
Housing Works Bookstore
HIVとホームレス問題に立ち向かうべく立ち上がった非営利団体である Housing Works は、ニューヨークシティ内にいくつもドネーションによるチャリティーショップを運営する。そのなかで、ソーホーにあるこちらは書籍や音楽・映像メディアに特化している。生活者や出版社・書店からの寄付品を販売し、利益は100%、団体の運営に使われる。
https://www.housingworks.org/locations/bookstore-cafe
ブルックリン
Cafe con Libros
黒人とラテンのミックスである女性オウナーが経営する、クラウンハイツにあるこちらの書店は、インターセクショナル・フェミニズムがコンセプト。カフェが併設されていて、本を通して人が集うコミュニティがまさに作られる場所。
https://www.cafeconlibrosbk.com
Books Are Magic
キャロルガーデンズに位置し、まさに店名の通り、本で実現するマジカルな体験を感じさせる明るいバイブが溢れる本屋さん。書店員がじっくり考えて書いたのを想像させるオススメメモがたくさんあって、選ぶのが楽しい。児童書や料理本も豊富。
https://booksaremagic.net
Word
グリーンポイントにあるここは、我が家から徒歩数分なので、私たちがもっともよく利用する本屋さん。小ぶりなのだけれど、読みたい本が見つかるので、近所に相性のいい書店があるのは嬉しい限り。書店員のオススメメモがたくさん書かれているところも好き。ニュージャージーにも店舗あり。
https://www.wordbookstores.com
Book Thug Nation
ウィリアムズバーグの古本書店。こじんまりとした店内にたくさんの本がぎゅぎゅっと。文芸とアートに強い印象。表にもラックが置かれていることが多いのだけれど、以前、山田詠美氏の小説やR型ライカに関する本など日本語書籍を見つけた。売った方が気になる…… そうゆう妄想が広がるのって、地域の古本屋ならではの楽しみ。
(ウェブサイトなし)
Spoonbill & Sugartown Books
すっかりジェントリジケーションが進みチェーン店が占領するようになったウィリアムズバーグの目抜き通りで、20年以上続く書店。新しい本と古本に加え、雑誌も幅広く取り扱う。
https://www.spoonbillbooks.com
Black Spring Books
2021年の春にウィリアムズバーグにオープンしたばかりの古本書店。人気書籍から、珍しいものまで、こじんまりとした店内にはさまざまな本が並ぶ。ちなみに空き地のような空間を挟んだすぐ先は、アメリカの作家ヘンリー・ミラーの生家(!)。店名は、作家の著書「黒い春」にちなんでいると思われる。
https://www.blackspringbookstore.com
Human Relations
ちょっと埃くささを感じる、昔ながらの古本屋さんといった佇まいのこちらはブシュウィックにある。詩集や古典文芸が豊富。
http://www.humanrelationsbooks.com
Unnameable Books
行くといつも、地域の人たちが読み終わった本をさらっと気軽に売りに来ているのを見かけて、プロスペクト・ハイツの地域コミュニティによって成り立っているのを感じる古本書店。循環がいい印象で、近くにあったらなぁ!とご近所さんたちがうらやましい。
https://unnameablebooks.square.site
Greenlight Bookstore
フォートグリーンとプロスペクト・レファーツ・ガーデンズで2店舗展開する本屋さん。店内は広々としていて、幅広いジャンルの書籍が揃う。
https://www.greenlightbookstore.com
Molasses Books
古本書店とカフェが一緒になった空間は、足を踏み入れるとエスプレッソの香りが広がる。お店があるのと同じブシュウィックで、印刷出版も行っている。つねに人が溢れている素敵な場所。
https://www.molassesbooks.org
Community Bookstore
アマゾンに対抗する強い社会的メッセージを発信している、パークスロープの小さな老舗書店は、創業1971年。店内にはおそらく多くの地域住民から受けた注文と見られる取り置きが積まれた大きな棚があり、コミュニティから愛されているのを感じる。
https://www.communitybookstore.net
Powerhouse Books
ダンボ、パークスロープとインダストリー・シティに店舗を構える。アートやフォトグラフィー系の品揃えが好みの書店。ダンボのロケーションでは、私が個人的に大好きなグラフィックノベル作家/イラストレーターのエイドリアン・トミネのプリントを販売していて、実物を見られるのが嬉しい。
https://www.powerhousebookstores.com
Big Reuse
キャロルガーデンズの南端にある大きな倉庫のような場所であるここは、環境系非営利団体によるスリフトストア。家具や食器、衣料などさまざまな中古品を売っているなかで、本のセクションもとても充実している。気候危機・人種正義・フェミニズム・LGBTQ+ など、スリフトストアとは思えないほどしっかりカテゴリーごと整理されていて、プログレッシブな書籍も多く見つかるので、ワクワクが止まらない。
https://www.bigreuse.org
Desert Island
イースト・ウィリアムズバーグにあるグラフィックノベルの専門店。有名な作家から、自主出版ものや、日本をはじめとしたアジアの作品の翻訳まで、グラフィックノベル好きにはたまらない品揃え。
https://www.desertislandbrooklyn.com
クイーンズ
Topos Bookstore
ブシュウィックの少し北に位置するリッジウッドにある、書店とカフェが一緒になったスペース。古本の棚を見ると、自分の本棚にあるものがたくさん見つかるので、好みが合うのかなぁなんて勝手に嬉しくなる。近くに行った際は立ち寄りたい場所。
https://www.toposbookstore.com
Book Culture
マンハッタンのアップタウンに2店舗ある書店の3号店として、ロングアイランドシティにオープンしたのがここ。2フロアあり広々としていて、書店があまり多くないこの地域の人びとにとって、幅広い書籍に触れられる場所になりそう。随所に特集コーナーもあって、エンゲージしてくれる。
https://www.bookculture.com
Astoria Bookshop
その名の通り、アストリアにある書店。実は、私がニューヨークに引っ越してきてすぐの頃パートナーと一緒に住んでいた地域なので、思い入れがある。その頃オープンした本屋さんっていうところも、なんだかじーんとくる(いろいろ大変だっただろうに、残っていて嬉しい)。子供から大人まで、アストリアの人びとに本の楽しみを提供している。
https://www.astoriabookshop.com
おまけ
私は電子書籍より紙で読む方が圧倒的に多い。とはいえデジタルも印刷もそれぞれの環境負荷があるなかで、紙であれデータであれ、そもそも読みたいものすべてを所有する必要はない。
なので、インデペンデント書店をサポートしたいと言ってもそればかりではなく、ほかの方法で本を読むことももちろん多い。
図書館
まずは図書館。私はブルックリンに住んでいるので、ブルックリン公共図書館を利用。(カードがモーリス・センダックの「かいじゅうたちのいるところ」のイラストなのがすごく気に入っている。)
実はアメリカの公共図書館の多くは、返却が遅れると罰金を課する。日本ではなかったことなので、初めて知った際は驚いたな……。その遅延罰金制度がこのたびほぼ全面的に廃止になったとことが先日、NYPL(マンハッタン、ブロンクス、スタテンアイランド)、BPL(ブルックリン)、QPL(クイーンズ)と、ニューヨーク市5地区すべての公共図書館から発表があった。
本を買うことが経済的に難しく、借りる選択肢が重要な層にこそ、仕事に長時間拘束されていたり身体・精神的に困難があったりして、返却が必ずしも期日内にできない人びとが多くいる。事実、低所得者ほど「問題あり」リストに載りやすいと、NYPL は今回の発表で述べている。すべての市民が本に触れられる機会を提供する公共サービスとして、遅延罰金制度は現状にともなっていないと判断し、今回廃止されたそうだ。(もちろん、借りたものは可能な限りしっかり期日内に返却するべきであることには変わりないけれども。)
コミュニティ・地域のなかでの循環
もうひとつは、コミュニティや地域のなかでの循環。1年半以上前に書いたものだけれど、「これをやってこそ正真正銘のニューヨーカー?STOOPING(ストゥーピング)とは」でも記したように、ニューヨークでは住民やご近所さん同士で、ものを共有したり循環させる機会が結構ある。
本に特化したものでよく見かけるのが、Little Free Library(ニューヨークに限らずアメリカ全土で、そしてほかの国でも似たコンセプトは存在するよう)。公園や道の途中にあるふた付きの箱があり、そこは誰でも自由に本を持ち寄って入れることができ、そして誰もが自由に取り出して持ち帰ることができる。近くに住む人たちで作る図書館といった感覚だ。
我が家の近くの公園にも、Little Free Library はあるので活用している。
そのほかにも、集合住宅建物内や道ばたで、読み終わったり子供が成長してもう読まなくなった児童書などを、販売したり「ご自由にどうぞ」と出すことが、ニューヨークでは当たり前のように行われる。
あとは年に数回、近所のコーヒー屋さんが常連さんに呼びかけて持ち寄り中古本販売会を開催してくれるので、私も本棚整理をかねて持って行く(そして買い物もしてしまい持ち帰ってもくるのだけれど……)。ちなみにこれは、売り上げを地域のミューチュアルエイドに送るためのファンドレイジングの役割も果たしている。
そんなこんなで、インデペンデント書店・古本書店にローカルに出向きつつ、図書館、地域での循環も組み合わせながら、本とともに生きることを楽しんでいる。
バーチャルなニューヨークの書店・古本書店めぐり、楽しんでもらえましたか?
実は、今後もう少し、TLW でもインスタグラムでも、本や読書に関するコンテンツを増やしていきたいなぁと思っているところ。
もしこういったものが読みたい・知りたい・見たいというリクエストがあったら、ぜひおしえてください。
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